竹補強コンクリート・モルタル開発の研究が
日本建築学会で高く評価され若手優秀発表に輝く

2015日本建築学会若手優秀発表image001 この度、建築学専攻博士前期課程1年の我喜屋宗満さんが、一般社団法人日本建築学会材料施工委員会若手優秀発表を受賞しました。この賞は、平成27年9月4日(金)から6日(日)に行われた2015年度日本建築学会大会(関東)学術講演会材料施工部門における29歳以下の若手研究者等の優れた口頭発表に贈られるものです。我喜屋さんは『竹補強ポリマーセメントモルタルの耐凍結融解性に関する一考察』を発表。大学や企業の若手研究者も発表する中で、大学院生が受賞するのは稀なことであり、研究内容とともに高く評価されたものと思われます。  

我喜屋さんに受賞の喜びと研究について、詳しくお話を聞きました。

 

―若手優秀発表受賞おめでとうございます。
感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。口頭発表はこれまで3回経験しましたが、全国の研究者が一堂に会する日本建築学会大会での発表は初めてでした。学会発表の数か月後に賞状が届いたので、始めは何のことやらと思いました(笑)。指導教員の出村克宣先生や齋藤俊克先生からお褒めの言葉をいただきましたが、それでもいまだに実感が湧かないといった感じです。賞をいただけたのは私の力というより、ご指導いただいた先生方のおかげだと思っており、深く感謝しています。

―研究について詳しく説明いただけますか。

 近年、鋼材資源の価格が高騰したことから、その代替品が求められています。そこで建築材料学研究室では、ロハスの視点から竹材を有効活用する方法について検討しています。竹は生産性に優れ、3~5年で建設資材として利用できることや、鋼材の半分程度の引張強さを持つというメリットがあるので、小型コンクリート二次製品の補強材として用いることが可能だと考えられます。竹を利用することで鋼材不足を解消できるとともに、利用量低下により問題となっている放任竹林の抑制にもつながります。
 本研究室では、これまでの研究成果により、棒状の薄肉竹素材を格子状に組んで補強材にすることで、セメントモルタルの曲げ性状や耐衝撃性が改善されることを明らかにしました。また、セメント混和用のポリマーエマルションで表面処理すると、懸念された耐水性も改善され、曲げ性状や凍結融解の抵抗性も向上しました。しかし、塗布する手間や養生に時間がかかるという問題もありました。そこで、ポリマーセメントモルタルを基材とすることによって問題を解決。実験により、曲げ性状に関しては竹補強材のエマルション処理と同様の効果が得られることも明らかにしました。さらに本研究では、その耐久性を把握することを目的に、竹補強ポリマーセメントモルタルの耐凍結融解性について検討しました。
 なお、ポリマーセメントモルタルは、セメント、砂および水に、ディスパージョン(水の中にポリマー粒子が分散)または粉末樹脂を加えて製造され、セメント質量に対するポリマー固形分の質量百分率をポリマーセメント比といいます。
2015日本建築学会若手優秀発表image002 ポリマーセメント比を0%、5%、10%、20%とし、格子状の竹補強材を埋め込んだポリマーセメントモルタルの供試体を作製し、凍結融解試験を行い、それぞれの相対動弾性係数、質量減少率、耐久性指数について調べました。その結果、竹補強ポリマーセメントモルタルの相対動弾性係数は、ポリマーセメント比に関わらず凍結融解サイクル数の進行にともなって低下する傾向が見られました(図左)。しかし、竹補強セメントモルタルに比べると、その低下の程度は緩慢になることもわかりました。一方、質量減少率はポリマーセメント比が大きくなると凍結融解の進行にともなって増加していました。耐久性指数はポリマーセメント比が5%のときに最も大きく、20%に増大しても指数の改善は見られませんでした(図右)。これは、吸水による質量の増加が生じたことで、供試体内部での凍結融解作用が大きく影響しているからだと考えられます。これらのことから、竹補強ポリマーセメントモルタルの耐凍結融解性は、使用材料の種類や調合に依存すると推察できます。
 2015日本建築学会若手優秀発表図12015日本建築学会若手優秀発表図2

―どのような点が評価されたと思われますか。

 まず、補強材として竹を使用するという発想が独創的で、注目を集めたのだと思います。ロハスの視点で研究に取り組んでいることが、社会的にも評価されてきているようです。また、発表時に今後の展望について質問されましたが、鉄筋コンクリートのひび割れ防止のために用いる応力負担のない用心筋の代替などにも竹材を活用するといった具体的なビジョンを提示しました。研究内容をわかりやすく伝えられたことや将来性も含めて評価されたのだと思います。

―どんなところが研究の魅力ですか。

 予測をたてて実験を行いますが、どうなるかは実際にやってみなければわかりません。うまくいかなくても“失敗”ではなく、その原因がわかれば“成功”と言えるのです。今回の実験でポリマーセメント比が高いから性能が良いというわけではないことが確認できたように、本を読んでもわからないことが実験することで明確になります。実験で出た結果が、一番正しい答えと言えるでしょう。だから、研究すればするほど面白くなってくる。そこが研究の魅力だと思います。

2015日本建築学会若手優秀発表image005―今後の目標についてお聞かせください。

 竹の編み方やポリマーセメント比によっても性能が変化するので、いろいろなパターンで実験を重ね、より高性能な竹補強ポリマーセメントモルタルをつくりたいと考えています。来年の学会ではその成果を発表し、また賞に結びつくようにプレゼンテーション力も高めていきたいと思います。
 

―最後に後輩たちにメッセージをお願いします。

2015日本建築学会若手優秀発表image006 高校から大学に進学したとき、大学から大学院に進学したとき、そして社会に出たとき、それぞれ新しい環境になったときにどう努力するかによって、その先が違ってくると思います。わたしは普通高校出身で、建築の勉強を始めたのは大学に入ってからでした。それが研究者になりたいと思い、大学院進学を決意。院生になってから、このように評価していただけたように、頑張りしだいで道は拓けてきます。皆さんも決意をもって、次の新たなステージに挑戦してください。

―ありがとうございました。今後の活躍を期待しています。


2015年度日本建築学会大会(関東)学術講演会材料施工部門若手優秀発表結果は
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