色素増感太陽電池の基板機能の新たな発見が高く評価される

2016第35回固体・表面化学討論会優秀講演賞image001 平成28年11月21,22日に室蘭工業大学で行われた「第35回 固体・表面光化学討論会」(日本化学会、光化学協会、触媒学会、電気化学会共催)で、生命応用化学専攻博士前期課程2年の吹野良輔さんが優秀講演賞を受賞しました。
 本会は無機及び有機の固体あるいは表面・界面の関与する光物理化学過程とその応用(光触媒、太陽電池、光伝導、有機EL など)を主題としており、吹野さんは「TiO2単結晶上に配向吸着したメチレンブルーのベイポクロミズム」について発表しました。優秀講演賞は35歳未満の候補者11人の中から3人が選ばれましたが、学生で受賞したのは吹野さんだけでした。講演および研究内容が高く評価されたものと思われます。
 吹野さんに受賞の喜びと研究について詳しくお話をお聞きしました。

 

―この度は優勝講演賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。ポスター・口頭発表含めて受賞したのは初めてのことで、大変嬉しく思っています。今回は心血注いで研究に取り組んだこともあり、賞をいただけたらいいなという思いも少しありましたが、本当にいただけて心から“やったー”と喜びました。特にこの学会は、いい研究、いい成果が出ないと参加できない討論会でしたから、自分の中でも重要視していました。所属する光エネルギー変換研究室の中で口頭発表できたのは私だけだったので、受賞できて良かったと思います。ご指導いただいた加藤隆二先生にも深く感謝しております。

 

―研究について詳しく説明いただけますか。

 私たちの研究室では色素増感太陽電池に着目し、そのメカニズムの解明に取り組んでいます。色素増感太陽電池は、酸化チタンのペーストで多孔質の膜をつくることで、色素が吸着しやすくなり2016第35回固体・表面光化学討論会優秀講演賞image0032016第35回固体・表面光化学討論会優秀講演賞image002発電効率がアップします。さらに酸化チタン膜にメチレンブルーを吸着させると、湿度の変化によって色が紫から水色に変化することも実験により明らかにしました。そこで、もっと効率よく発電する色素について調べるために、平坦な表面であることが利点であるTiO(二酸化チタン)単結晶ルチル型面を基板にして実験したところ、ある魔法みたいな事象を発見したのです。まず、ディップコーティング法と呼ばれる手法を用いて、TiO単結晶基板を色素となるメチレンブルー溶液に垂直に浸漬し引き抜きました。通常ですと色素の分子はランダムに基板に吸着しているので、成膜前にラビングします。ラビングとは、ブラッシングによって分子を一定方向に配列させる手法で、液晶分子の配向処理が必要な液晶ディスプレイにも使われている方法です。ところが、この基板はラビングする前にすでに色素が一定方向に配列していたのです。最初は偶然かと思い、再度検証してみましたが、やはり同じ現象が起こりました。これは面白いと思い、なぜそうなるのかを深く追究してみようと考えました。配向吸着を利用して新たな加工技術を開発する研究にもつながるからです。
 本研究では、配向吸着とラビング効果について検証を行いました。配向吸着のみの場合は、基板上の結晶面の影響を受けるエピタキシャル成長が見られました。配向吸着した方向にブラッシングした場合、同様の配向方向になりましたが、逆方向にブラッシングした場合は配列も逆転しました。このことから、エピタキシャル成長よりラビング効果の影響が強いことがわかりました。

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―どのような点が評価されたと思われますか。

 2016第35回固体・表面光化学討論会優秀講演賞image005 発表した際にたくさんの質問がきたことからも、この研究に対して多くの方が興味を持ってくださったのではないかと思います。ラビング法は100年前から研究されていますが、そのメカニズムは未だ解明されていません。それに挑戦した中で、とてもユニークな発見があったことも、衝撃的だったのではないでしょうか。私もこの研究には高いモチベーションで臨めたので、自信を持って発表できましたし、質問にも戸惑うことなく答えることができました。プレゼンテーションのクオリティも評価をいただけた要因だと思っています。

 

―どんなところが研究の魅力ですか。

2016第35回固体・表面光化学討論会優秀講演賞image006 高校では生物を専攻していて、当時はあまり化学に興味はありませんでした。大学に進学し、4年次に研究室に入ってから、化学に目覚めたというのが本音です。この研究室では、研究に必要な装置を自分たちでつくっています。私も高感度分光吸収装置を作製し、ものづくりの楽しみを味わいました。その時初めて、自分の手先に器用さに気づき、もっとやってみたいと思い大学院にも進学しました。化学プラス機械の知識を得られるというのは大きなメリットでした。

 

―今後の目標をお聞かせください。

2016第35回固体・表面光化学討論会優秀講演賞image007 3月半ばに最後の学会発表があるので、それまでに研究成果を出したいと思っています。また、大学院修了後は研究用の実験装置を開発する会社に就職することになりました。自分の好きなものづくりに携わる仕事に就けて、大変満足しています。今の研究にも活かせるような精度の高い測定装置を開発できるように頑張りたいと思います。

 

―ありがとうございました。今後益々活躍されることを祈念しています。

 

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