審査会で高い評価を受け

企業が技術提案を行うセミナーの

講演作品にも選ばれた建築設計作品

 東北建築学生賞テクニカルセミナーimage0011017()に宮城県のせんだいメディアテークにて、「第18回JIA東北建築学生賞(公益社団法人 日本建築家協会東北支部主催)の公開審査が行われ、建築学科4年の築山茉由子さんが優秀賞、同3年の高梨真弘さんが奨励賞(東北専門新聞連盟賞)を受賞しました。優秀賞の築山さんは、123()に行われた「建築学生テクニカル・セミナー」にも参加。作品に対し企業から直接技術提案をいただくという機会を得られました。


 

優秀賞

作品名:「街のいえ―分節感と一体性―」 

東北建築学生賞テクニカルセミナーimage002建築学科4年(研究室:建築計画)

築山茉由子さん

『街を変える』という授業課題の中で、地方では深刻化しつつある中心市街地活性化の問題を選定し、福島県郡山市の敷地に計画しました。課題に取り組むにあたり、今まで一般的な解決策がボトムアップにこだわり過ぎたミクロな設計になりがちだと分析し、駅前という価値の高い敷地に計画するにしては少し地味かもしれないのですが、ヒューマンスケールを常に意識して、丁寧に設計することを大切にしました。プログラムは、郡山駅前に学生の居場所が少ないことに注目して、学習スペースを中心に計画しました。そこに食空間とアトリエなどの創作スペースといった帰属性の高いプログラムを複合することで家のような空間を目指しました。同時に人々の日常を豊かにする場は、福島県の避けては通れない課題である震災復興の問題にもつながると考えました。各地の中心市街地は高層化が進んでいますが、縦に積層していくことは、地上との空間が分断される現状を生みだしているのではないかと考え、今回の設計では帯を横に連ねていく低層な形態にし、街にのびやかに開いていくことを意識しました。内部空間は横に連ねた帯の空間の縦軸とそれを貫くもうひとつの軸で構成しました。各部屋を吹き抜けや完全な一室空間にするのではなくつなげていくことで、音や匂いが混ざり合う家のリビングのような空間になっています。外観デザインは開放的でアクティビティが見え、ガチャガチャした街っぽさが残る面とひっそりと静かで内に閉じた二面で構成されています。多様な表情を持つという点では、この建築自体がひとつの街のような空間を創り出していると思います。

受賞の感想:今回このコンクールに参加させて頂いて、自分の作品に込めた想いを他の人に表現するこ東北建築学生賞テクニカルセミナーimage003との難しさと、それを共有出来た時の面白さを実感できました。そのことで、今後より表現力を研き他者に伝える技術を身に付けていきたい、という意識にさせられました。学生時代として建築の計画や設計に取り組める機会も数少ないですが、社会に出て仕事に取り組む前に、それらを通して自分らしさを模索しておきたいと思います。

 


「街のいえ―分節感と一体性―」.pdf

 

学内評価(テクニカル・セミナーにて)

指導教員:建築学科浦部智義准教授

東北建築学生賞テクニカルセミナーimage004科目担当の先生との協働指導による作品と云えますが、今回選ばれた築山さんの作品は卒業設計に取り組む直前の4年前期授業の「建築計画設計」という科目名の課題作品で、基本的には敷地も含めて自分でプログラムを考える形をとっています。ですので、3年生後期までの課題よりも更に街や社会を意識しながら建築を創り上げていくというのが科目の大きなテーマになっています。築山さんはそのテーマに真正面から挑みながらも、やり過ぎず作り過ぎない姿勢でバランス良くつくり、社会に新しい価値観を与えている点が評価されていました。また、学内発表の時は、まだ練りが足りなかった部分はあったと思うのですが、プログラムがシッカリしていたので伸び代は感じさせました。タイトルにも“分節感”と“一体性”とあるように、短冊形に切りながら横つなぎに一体感を演出し、街中の賑わいと居心地のよさを複合させる様な手法は、ひとつの要素に偏らない上手さも感じさせます。一方向からのアプローチにならず、落とし所を見つけていく計画・設計の姿勢も評価につながり、応募作品として選抜される要因になりました。

自分が扱える身近な空間を出発点にしながらも、徐々に空間的操作も含めて工夫しながら、社会的に影響のある建築に変えて行く手法は素晴らしいと思います。大味な建築が多いまち中で、程々につくりながら大きな影響を与える、これからの建築のあり方にも示唆を与えていると思いました。

 

審査会でのJIAの評価(テクニカル・セミナーにて)

東北建築学生賞テクニカルセミナーimage005JIS青森の蟻塚学建築設計事務所の蟻塚学氏から次のようにご説明いただきました。 

 審査の結果、この作品は優秀賞という高い評価を受けました。まず、コンセプトの中心市街地活性化とデザインへの踏み込み方がよかったと思います。実務でもよくありますが、小さい店に力いれていくことで一つひとつのクオリティは上がるけれど、街並の全体バランスが取れない。逆に街全体をデザインしていくと大味、大ざっぱになって生活感のない、人間味のない街並になってしまう。それらをきちんと理解したうえでデザインするというコンセプト文を読んで、「これはできるな」という印象を持ちました。2つの視点をバランスよく取り入れて計画しようとしているところが学生離れした切り口で素晴らしいと思います。実際プランされた平面図をみると「うまいな」というのが第一印象でした。審査会でもリアルにこのプラン使って集客できそうだという高い評価でした。外観は少し平坦過ぎるかなという感じでしたので、外壁について企業からご提案があればいいかもしれないと思いました。プレゼンテーションですが、ボードの作り方、プランの書き方や色遣いが秀逸で、内部空間を表現した手書きのパースがゆがんで良く見えるのも効果的でした。また模型の作り方、写真の使い方に工夫があればよかったと思います。全体的に地に足のついた学生らしからぬリアルな提案だったことが評価につながる大きなポイントでした。

 


作品が現実的な建築物に近づく企業からの技術提案

企業からの技術提案

築山さんの作品に対して、2社の企業から自社の技術や商品をご提案いただきました。サッシからキッ東北建築学生賞テクニカルセミナーimage006チン・ユニットバスまで取り扱う建材総合メーカーのLIXIL㈱様からはサッシについて提案いただきました。創作・学習ゾーン、多目的ゾーンなどゾーン別にどのようなサッシがふさわしいか、さまざまな商品の中から考えていただきました。西面大開口スクリーンゾーンは自社のE-SHAPE Windowの内部側に国産材を貼り、外観はスリムなアルミでスタイリッシュに、内観は温かさを感じる形状に、創作・学習ゾーンには流れる風を捉える外気を積極利用する自然換気の窓ガラスをご提案。築山さんの作品に息吹を吹き込むようなご提案に、築山さんもメモを取りながら真剣に耳を傾けていました。

 

東北建築学生賞テクニカルセミナーimage007 続いて㈱イケダコーポレーション様からは、快適でワクワクする内装仕上げについてご提案いただきました。作品から公共性、快適性、創造性、多様な空間、新鮮さというキーワードを導き出し、それらにふさわしい天然水性エマルジョンという塗料を使用することをご提案。壁面をそのまま使ってワークショップやライブペインティングもできるなど、美しい天然顔料14色のバリエーションを持った塗料により、大小さまざまな空間を演出。デザイン性も高く相乗効果も期待できます。

これらのご提案に対し築山さんは、「細かいところの収東北建築学生賞テクニカルセミナーimage008まりとか空間を作る材質一つひとつが重要だと感じました。卒業設計はそういう細かいところまで考えて、空間のスタディを重ねていきたいと思います。ありがとうございました」と感想を述べました。

このような機会は建築家を志す学生にとって大変貴重な体験になります。指導教員の浦部智義准教授も「社会に出る前、仕事や業務に偏ることなく色んな物事をフラットに吸収できる時期に、自分の提案した(自分が一番良く知っている)作品に対して、具体的なご提案を頂くといった体験ができたことはとても意義ある事だと思いました。本人の成長にもつながると思います」と話しています。

 

奨励賞(東北専門新聞連盟賞) 

作品名:「住宅街の劇場空間」 

東北建築学生賞テクニカルセミナーimage009建築学科3年(ゼミナール:建築計画)

高梨 真弘さん

この作品は、緩やか傾斜で人々が思い思いに寛ぎ、まるで劇場のような空間となっていたイタリアの観光広場を手掛かりに設計していきました。「楽都」を掲げながら、生の音楽に触れる機会の少ない郡山。そこで郡山市公会堂のある敷地に新たに野外音楽ホールを設け、地元建築家の業績を飾る建築ミュージアムやアーカイブ、カフェなどの施設を集積した劇場空間をつくることを考えました。郡山市公会堂がある郡山市麓山(はやま)は、周辺に住宅街、図書館、学校がある文化ゾーンとなっています。本設計は室内楽の場である公会堂と、演劇や音楽活動などを野外で開放する発信の場で構成され、その発信の場と住宅街とを建築群で隔てることにより、日常空間と非日常空間との境界、また音響的境界を形成しました。建物に関しては、震災の記憶が薄れることを危惧し東北建築学生賞テクニカルセミナー10て、危機感を持たせるという意味を込めてデザインにしました。建築家の職業を知ってほしいと思い、内観は入った人に光と闇のコントラストを与えることを考えて設計しました。

受賞の感想:今まで、私はコンペ等に応募する様な経験が無かったため、右も左もわからない状態からスタートしましたが、指導して頂いた先生方や院生の方々はじめ、まわりにサポートして頂きながら、作品を仕上げ提出できたことが先ず自信につながりました。このコンクールでの貴重な経験を活かして、これからも努力していこうと思います。              「住宅街の劇場空間」.pdf                                          


学内の評価について

科目担当教員:速水清孝准教授・渡部和生特任教授

建築は、物質としては身近にありながら、人々の理解を失って久しい。建築と人との関係を改める建築とは――。この問いに対する高梨さんの回答は、広場を全ての接着剤にするものでした。現状のアナロジーとして分散させた建築同士を、また、その場で奏でられる音楽を介して人と人を、そして、人とその背景となった建築とをつなぐ。この提案が学外でも評価を得たことをうれしく思います。ますますの活躍を期待します。