分離技術に利用できる可能性が高い点が評価され奨励賞に輝く

分離技術会年会2016奨励賞image001 5月27、28日に、日本大学生産工学部津田沼キャンパスで開催された『分離技術会年会2016』のポスター発表にて、博士前期課程生命応用化学専攻1年の佐藤佳代子さん(環境化学工学研究室)が奨励賞(東洋エンジニアリング賞)を受賞しました。佐藤さんが発表した『イミダゾリウム系混合イオン液体の二酸化炭素溶解度』の研究は、イオン液体をガス吸収液として利用することを目標に、化学構造の異なるフッ素系アニオンを有したイミダゾリウム系イオン液体を合成し、イオン液体の組成を変化させた際の常圧下における密度・粘度の温度依存性、高圧下における二酸化炭素溶解度について検討したものです。この研究は、地球温暖化問題に関連した二酸化炭素の処理や、未利用資源、特に酸性ガスの多い天然ガスの浄化など古くから続く課題に、従来からの化学吸収法ではなく、あえてイオン液体を利用した物理吸収法を選んで果敢に挑戦したものであり、分離技術に利用できる可能性が高い点が評価されました。

 佐藤さんの喜びの声とともに、研究についてお話を聞きました。

―奨励賞受賞おめでとうございます。

 ありがとうございます。今回の発表は、私にとって全国大会デビュー戦でした。ポスター発表前には、スライドを使った口頭でのフラッシュ発表もあり、心臓が口から飛び出すのではないかと思うほど緊張しました。ポスター発表では、私の研究に興味を持っていただいた企業や他大学分離技術会年会2016奨励賞image003の方から多くの貴重なコメントを頂戴し、充実した時間を過ごすことができました。その結果、思いがけず、栄誉ある奨励賞を受賞することができ、大変光栄に思います。今回の受賞は、指導教員の児玉先生をはじめ、日頃お世話になっている共同研究者の皆さまや先輩のご指導、ご協力があってのものであり、大変感謝しています。また、とても高く評価していただいた東洋エンジニアリング株式会社(写真左:鈴木様)の皆さまに、心から御礼申し上げます。(写真右:分離技術会会長・日本大学生産工学部日秋教授)

―発表された研究内容について、詳しく説明いただけますか。

 近年、地球温暖化対策技術の一つとして、イオン液体を用いた二酸化炭素物理吸収プロセスが提案されています。イオン液体は、カチオンとアニオンのみから構成される常温で液体状態の塩で、蒸気圧は非常に低く、酸性ガスを選択的に吸収することができます。また、組み合わせも無限にあり、物性や機能を幅広く設計できるという利点がありますが、イオン液体単体では極細やかな物性設計は難しいとされています。一方、複数のイオン液体を混合することにより、密度や分離技術会年会2016奨励賞 装置粘度などの物性を大きく変化させることが可能になるという報告もあります。そこで本研究では、2種類のイミダゾリウム系イオン液体([Bmim][TFSA]と[Bmim][PF6])を合成し、イオン液体の組成を変化させた際の常圧下における密度・粘度の温度依存性、高圧下における二酸化炭素溶解度について検討しました。[TFSA]は二酸化炭素吸収量が高い性質を持っていますが、コストが高いというデメリットがあります。フッ素数が同じで化学構造の異なる[PF6] と混合することで、コストの低減化を図る狙いもありました。実験には、pVTや溶解度データを精密に測定できる研究室で独自に開発された体積可変型溶解度測定装置などを使用しました。

―どのような成果が得られましたか。

分離技術会年会2016奨励賞(表図) 構造の異なるイオン液体を等モルで混合したことにより、二酸化炭素溶解度は、純イオン液体の中間に値を示すと予想していましたが、予想に反し、一方のイオン液体側に片寄る結果となりました。[PF6]が[TFSA]よりアニオンサイズが小さいために、二酸化炭素の入り込む空隙が少なかったためだと思われます。未だデータの報告例が少ない混合イオン液体系について、精密な化工物性データを蓄積することは、とても価値のあることです。今後は、2つのイオン液体の混合割合を変え、常温に近い温度や高い温度にするなど、様々な条件下での実験を計画しています。分離技術会年会2016奨励賞 (図)説明研究をさらに推進することにより、ガス吸収液として最適なイオン液体の開発につながればと考えています。

 

―どんな点が評価されたと思われますか。

分離技術会年会2016奨励賞image009 私が発表を行ったセッションでは、シミュレーションによる研究成果の発表が多く、本研究のような実験での成果報告は珍しかったのかもしれません。また、地球温暖化問題に関連した二酸化炭素の処理に、従来からの化学吸収法ではなく、あえてイオン液体を利用した物理吸収法を選んで果敢に挑戦したことにも注目が集まりました。これまでにない新たな手法を分離技術に利用できる可能性が高いことが評価されたのだと思います。まだまだ課題は山積みですが、いただいた数多くのご意見やアドバイスを活かして、研究を進めていきます。

―どんなところが研究の魅力ですか。

分離技術会年会2016奨励賞image0011 もともと理科が好きだったこともあり、化学の道に進みましたが、化学工学という分野を知ったのは大学に入ってからでした。本研究室では、世界に通用する物性研究を国内外の研究機関や企業とともに継続的に行っていて将来性があることや、地球環境問題の解決など社会に貢献できる研究に携われることが一番の魅力です。将来は、ガスやプラント関連の会社など化学工学の知識を活かせる職に就きたいと思っています。

―後輩たちにメッセージをお願いします。

 現在、みなさんが大学で学んでいる勉強は日常生活に役立っています。私の専攻している化学工学は、製品の製造に大きく関わっており、安全にものをつくるための設計・操作の際に化工物性データは必要不可欠です。化学工学に限らず、研究すればすぐに成果が得られるわけではありません。コツコツ積み重ねていくことが大切なのです。賞につながらなくても、いつか認められる日がくれば、喜びに変わるでしょう。やりがいを持って研究に臨んでください。

―ありがとうございます。今後の活躍も期待しています。

 

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