セラミックス材料の新技術開発が
高く評価され若手奨励賞に輝く

日本材料科学会若手奨励賞2015 image001 この度、生命応用化学専攻2年の瀬谷恭佑さんが、6月5日に行われた日本材料科学会平成27年度学術講演大会において若手奨励賞(口頭発表部門)を受賞しました。
 受賞した講演題目は、『Al2O3-HfO2共晶系耐環境皮膜の作製』。Al2O3-HfO2共晶皮膜とSiC基材の高温における化学反応性を明らかにし、その化学反応を利用して、集光加熱により多層皮膜を得る手法を開発した研究で、さらに、多層皮膜の形成メカニズムについて状態図を用いてその詳細を説明しました。
 この賞は、40歳以下の登壇者に対し、研究内容およびプレゼンテーションにおいて特に優れたものに贈られます。学生で受賞することは非常に稀であり、研究への期待の大きさが窺えます。

 受賞した瀬谷さんに喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。

―若手奨励賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。口頭発表はこれまで数回経験していますが、個人として賞をいただくのは今回が初めてです。受賞したときは驚きました。研究成果を評価していただけ、とても光栄に思います。

―研究内容について詳しくお聞かせいただけますか。

 私たち無機材料化学研究室では、高温セラミックス材料の研究に取り組んでいます。『Al2O3-HfO2共晶系耐環境皮膜の作製』の研究は、ガスタービンやジェットエンジンのタービンブレードに応用できる材料を開発することを目的としています。現在、これらに使用されている主な材料は合金ですが、次世代材料として期待されているのがシリコンと炭素からなるSiCです。しかしSiCは、耐熱性は高いものの酸化や腐食に弱いというと弱点があります。それを補う方法として効果的なのがコーティングです。そこで私たちはコーティング材料として、酸化化合物であるAl2O3(アルミナ)とHfO2(ハフニア)に注目しました。HfO2は融点が高く、耐水蒸気腐食性に優れ、機械的強度、耐熱性、耐摩耗性、耐食性に優れていています。Al2O3は高融点材料です。これらの共晶、つまり混ぜ合わせて共融混合物にすることで、基材の酸化・腐食を防ぎ、より耐熱性が高い耐食性の皮膜になるのではと考えました。

日本材料科学会若手奨励賞2015image002 また、この研究の大きな特徴でもありますが、セラミックスを溶かして固める集光加熱による方法で皮膜を作製しました。共晶組織は微細構造を形成し、高温でも高い強度を維持することができます。最初にAl2O3とHfO2の共晶系が皮膜材料として使えるかどうかを実験したのが学部4年のときでした。これなら使えそうだという好結果が得られ、大学院1年次にはSiC基材上へのコーティングに挑みました。皮膜自体つくることが難しいとされていますが、運よく最初の試みで作製可能であることがわかりました。基材と共晶層の間にもう一つ別の層ができていて、それが高い密着性につながったのではないかと思われます。1年間実験を重ねた結果、基材と皮膜材料の熱膨張係数に差があると壊れやすくなることもわかりました。

 その後、もっと簡単にできる方法はないかと考え、つくばにある国立研究開発法人物質・材料研究機構(NIMS)のインターンシップ制度を利用し、そこで電気炉による成膜実験も行いました。しかし高温で長時間熱処理するとアルミナ成分が蒸発してしまい、皮膜は作製できませんでした。今回発表したのは、これら集光加熱による成膜と電気炉による成膜の2つの実験結果です。
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―どのような点が評価されたと思われますか。

日本材料科学会若手奨励賞2015image005 発表の一番のポイントは、皮膜の形成機構プロセスにおいて、どういう過程で中間層と共晶層の皮膜ができるかという点でした。日本材料科学会は、セラミックスだけでなく、金属材料、有機材料、高分子材料など多岐にわたる分野の研究者が所属しているので、この研究をわかりやすく伝えることを心掛けました。それにより、研究への理解が深められたのだと思います。また、集光加熱による成膜手法も独創性があり、成果につながったことも評価されたのではないでしょうか。

―どんなところが研究の魅力ですか。

 研究は思い通りにいかないことばかりですが、続けていくうちに結果的に良い方向にいったり、思いがけずできてしまったりするときもあり、予想もつかないアドベンチャーを体験しているようでワクワクします。もともと化学は好きでしたが、得意というわけではなかったのです。それでも研究者になりたいと思い、大学院にも進学しましたから、研究に惹かれたのだと思います。

 

―今後の目標や将来の夢についてお聞かせください。

ガスタービンの材料としてより適合する材料を見つけるために、さまざまな材料で実験を試みたいと思っています。今は別の共晶系で実験していますが、まだまだ可能性を秘めた材料があるはずです。

将来はものづくりに携わるエンジニアになって、自分の関わった製品を目にすることが夢であり、それを目指して頑張りたいと思います。

 

―後輩にメッセージをお願いします。

 私の場合も“好き”という気持ちだけでここまで来られましたから、「自分には向いていないのでは?」と思わずに、まずは挑戦してみることが大切だと思います。例えば『A+B=C』になるという知識を持っていたとしても、その本当の意味までは理解していないことがほとんどです。もっと知りたい、自分で試してみたいと思ったら、やってみるべきです。そうして自分の可能性を拡げていってほしいと思います。

 

―ありがとうございました。今後の活躍も期待しています。

 

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