食品廃棄物から有用な物質を抽出するための
新しい分析方法の研究が評価され賞に輝く

2015日本分析化学会ポスター賞image001 9月9日(水)~11日(金)に行われた公益社団法人日本分析化学会第64年会において、生命応用化学専攻博士前期課程1年の月岡聖也さんが若手優秀ポスター賞を受賞しました。日本分析化学会は理・工・農・医・歯・薬学などの広い領域に関連しており、分析化学関連では世界最大規模を誇っています。この賞は、若手ポスター発表約150件の中から、審査員による厳正な審査によって選ばれるものです。月岡さんが発表した『ラマン分光法による構造類似分子混合物の多変量解析を用いた定量分析』は、昨今注目されている分析方法を用いていることから、研究への期待とともに審査員から高く評価され若手優秀ポスター賞に輝きました。

 月岡さんに受賞の喜びの声と、研究についてお話を聞きしました。

―若手優秀ポスター賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。学部4年生時を含め、ポスター発表はこれまで3回経験しましたが、賞をいただいたのは初めてでしたから、まずは驚いたというのが正直な感想です。他にもラマン分光法関連の研究発表があった中で、私のポスター発表を評価していただけたのは大変光栄なことですし、自信にもなりました。
 ポスター発表前は不安で、何度も練習を繰り返し準備しましたが、想定外の質問をされて戸惑う場面もありました。しかし学会での発表を通して、他の研究者の方からアドバイスをいただいたり、自分の知らない研究について知る機会にもなり、視野や知識が広がりました。

―研究について詳しく説明いただけますか。

 この研究の目的は、食品廃棄物から有用な物質を抽出して再利用することです。私たちはスイカの食べ残しにレーザーをあててスペクトルを測定し、コンピュータ処理によりどれくらい有用な物質が入っているかを簡易に分析する方法を研究しています。ラマン分光法は、物質にレーザーなどの単色光を照射したときに発生するその物質固有の散乱光を測定し、分子・結晶構造に関する情報を得る分析方法です。これまでラマン分光は定性分析や構造解析に利用されてきましたが、レーザーパワーの変動がラマン強度に大きく依存するため定量解析にはあまり使われていません。反面、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)と違い前処理が不要で、さまざまな成分を含んだ物質の測定が可能なこと、水を多く含んだ物質の測定も容易にできるなどの利点があります。そこで、私2015日本分析化学会ポスター賞image002たちはラマン分光法に多変量解析を用いて、構造が似ている分子混合物の定量を試みました。スペクトルはピークの出現位置が同じで、強度比のみ異なるRutin(ルチン)とQuercetin(ケルセチン)を使用しました。これまでは強度比の違いでしか定量できなかったのですが、多変量解析を用いることでスペクトル全体を見て、どの物質がいくら含まれているか判別することができました。これにより、さまざまな成分が混じっている食品廃棄物から有効な物質をどれだけ抽出できるかも即時にわかるようになります。

―どんなところが研究の魅力ですか。

 物質の構造や性質に興味がありましたが、この研究は光をあてて分析するのが面白いところで2015日本分析化学会ポスター賞image003す。しかし学部生の時にはなかなか成果が得られず、違う方法を試したりもしました。実験は廃棄物を扱うので、悪臭との闘いでもあります。それでも、一度始めた研究なので最後まで突きつめて結果を出したいと思い、大学院に進学し研究を続けました。こうして賞をいただけて、頑張った甲斐があったと思います。また、研究へのモチベーションにもつながりました。

 化学は身の回りにあるさまざまなものに関わっていて、広がりもあり面白い分野だと思います。実際にやってみると難しかったり苦戦したりもしますが、環境に役立つ研究なのでやりがいを感じています。

ゆくゆくは廃棄物からアミノ酸を抽出し再利用できるようにすることが目標です。

―後輩たちにメッセージをお願いします。

 大学院に進みたいと考えている人は、学部生のうちにできるだけ知識を身につけたおいた方がよいと思います。数多くの論文を読まなければならないので、特に英語力が必要になります。私も英語を勉強しながら論文を読みこなしているところです。奨学金制度もあり、学会での受賞により返金免除になることもありますので、研究を続けたいと考えている人は、ぜひ大学院進学に挑戦してみてください。

―ありがとうございました。今後ますますの活躍を期待しています。