次世代材料として期待されるSiCセラミックスの 耐環境皮膜に関する研究が高く評価される

 生命応用化学専攻2年の菅野直登さんが、5月31日に行われた日本材料科学会主催「平成30年度学術講演大会」において若手奨励賞を受賞しました。本会は広く材料工学分野を対象とする学会であり、材料科学に関する理論の進歩および技術の向上に寄与することを目的としています。年1回行われる学術講演大会では、口頭発表部門・ポスター発表部門で40歳以下の優秀な若手研究者に対し奨励賞を授与しています。本年度は各部門とも4件が選ばれました。菅野さんの発表した「Ln2Si2O7 (Ln=Y,La,Lu)-mullite共晶組成を有するガラスの結晶化と溶融-再結晶挙動」は口頭発表部門での受賞であり、研究内容およびプレゼンテーションにおいて特に優れていた点が評価されました。
 菅野さんに喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。 

 

―奨励賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。大学院に進学後、学会での口頭発表は5回目でしたので、緊張感はあるもののスピーチにも余裕ができ、賞が取れたらいいなという気持ちで臨みました。でも、表彰式で名前を呼ばれた時は大変驚きました。いまだに信じられないです。指導教員の上野俊吉先生からも「おめでとう」と声を掛けていただきましたが、やっと取れたという思いとともに、賞をいただけて本当に良かったと思っています。

 

―研究内容について詳しく説明いただけますか。

 私たち無機材料化学研究室では、ガラスの結晶化を利用した耐環境皮膜の作製をテーマに研究を進めています。ガスタービンなどの次世代材料として期待されているSiC(炭化ケイ素)セラミックスは耐熱性に優れていますが、高温の燃焼場で発生する水蒸気と反応して気体化してしまう欠点があります。そこで、水蒸気との反応を防ぐためのコーティング材料について検討しています。このようなコーティングを耐環境皮膜と言います。本研究では、耐水蒸気腐食性の高い希土類シリケートLn2Si2O7と酸化アルミニウムAl2O3と二酸化ケイ素SO2との化合物であるmullite(ムライト)を組み合わせた共晶組成のガラスを作製し、その物性を調べました。共晶の組織は2つの単結晶が絡まった微細な組織となり、粒界ガラス相が形成されないので、耐水蒸気腐食性に優れる材料に適していると考えました。
 粉末原料を混ぜて棒状に成形し、集光加熱装置で液状に溶かして銅製の皿に落とすと急冷して固まります。熱処理前は透明だったガラスは、熱処理により結晶化して白くなります。その組織がどれだけ微細化しているかをSEM(電子顕微鏡)で調べました。共晶組織は複雑に絡み合っており、微細な組織であることが確認できました。ガラスから結晶化する際の相変化をX線回折装置で調べると、目的の結晶の相が得られていました。共晶組成のガラスの塊は、高温で結晶化した後、本来の融点より低い温度で部分的に再び溶けて再結晶化します。このメカニズムを応用すれば低温で耐環境皮膜を成膜でき、製造プロセスでは大きなメリットとなります。部分溶融再結晶の詳しいメカニズムは不明ですが、現在、実験を重ねて可能なモデル案を構築しているところです。

―どのような点が評価されたと思われますか。

 これまでの口頭発表はとても緊張して、質問が来てもどう答えていいのかわからず戸惑うばかりでしたが、今回はこれまでとは違い、それほど緊張しませんでした。研究に関する知識も豊富になり、質疑応答もスムーズに対応して、相手に分かるように説明することができました。経験を積み重ねてきたことが活かされたと思います。

 

―なぜ大学院に進学したのですか。

 化学と言っても無機・有機・分析・生命など分野は幅広く、専門的な技術者になるためにはもっと勉強が必要だと感じました。遅かれ早かれ社会に出るわけですから、大学院で研究できるチャンスがあるのなら、経験したいと思い進学を決めました。研究はもちろんですが、こうした学会での口頭発表が経験できるのも、大学院生ならではです。また、学部生の時に大学院進学者を対象とした、国立研究開発法人物質・材料研究機構NIMSのインターンシップに1か月参加する機会にも恵まれました。一流の研究者が集まる中、高度な実験設備を使って、自分の研究テーマに取り組むことができました。多くの研究所の研究員からご指導いただき、ランチミーティングで研究発表したりと、社会に出る前に一流の研究機関の現場に携われたことは大変貴重で、大学だけでは学べない有意義な社会体験ができました。

 

―今後の目標についてお聞かせください。

 この研究では、まだわかっていないことが多々あるので、一つひとつ解明していき、その成果をしっかりとした修士論文としてまとめたいと思っています。最終的にはガスタービンの皮膜材料として利用されるよう、実用化を目指したいです。また学会に参加する機会があると思うので、発表のクオリティをあげていくことも目標です。

 

―最後に後輩たちにメッセージをお願いします。

 様々な化学反応により、全く新しいものや生活に便利なものをつくれるのが化学の魅力です。つくったものが社会で使われるかもしれないと思うと、研究も楽しくなります。世の中にはものが溢れていますが、いろいろなものに興味を持つことが大事です。それらがどうやってできているのか、自分で調べることもできます。そうした好奇心がきっかけで、やりたいことにつながっていくのだと思います。

 

―ありがとうございました。今後の活躍も期待しています。

 

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