犬と飼い主、地域住民をつなぐ建築・都市空間の提案が高く評価される

 10月22日(日)に九州女子大学で行われた日本インテリア学会第24回卒業作品展において、平成28年度建築学科卒業の佐々木浩祐さん(浦部研究室)の作品『犬の散歩にZ軸を―バイリンガルな建築―』が最優秀作品賞を受賞しました。日本インテリア学会は、インテリアに関する研究および調査を通じて学術の健全なる発展を図り、その成果を社会に還元することを目指しています。本作品展は、学生の「卒業」という最も新鮮な視点から「日本のインテリアとは一体どのような概念なのか」を表現方法も含め、社会状況・歴史と照らし変遷を汲み取る一つの貴重な場となっております。今年度は大学39校(47作品)、短期大学1校(1作品)、専門学校4校(5作品)、工業高校1校(1作品)が出展され、その頂点となる最優秀作品賞に輝いたのが佐々木さんでした。
 佐々木さんに喜びの声とともに、作品について詳しくお話を聞きました。

 

―最優秀作品賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。受賞の知らせを受けた時は驚きました。そして、このような賞をいただいたことを大変光栄に思います。この作品は4年間の集大成となる卒業設計の作品で、研究室の後輩たちにも徹夜して手伝ってもらい完成したものです。そのおかげで受賞できました。ご指導いただいた浦部智義先生、研究室の後輩たちに感謝しています。

 

―作品のコンセプトや設計のポイントについて詳しく説明いただけますか。

犬の散歩にZ軸を~バイリンガルな建築~

 本提案はペットと飼い主、そして地域住民のための街をつくるというものです。私も犬を飼っているのですが、近年のペットブームにより、ペットを飼う世帯が増加しています。中でも、散歩が日課となる犬を飼う現代人にとって、犬は愛玩動物としてだけでなく、近隣の人同士の緩やかなコミュニケーションツールとしての役割を担っていて、社会生活に欠かせない存在になりつつあります。そこで、ペットを媒介とした、地域住民のための建築をつくろうと考えました。卒業設計では、特殊な条件のもとで建築を提案する傾向があるようですが、自分としてはどこにでもある都市や住宅街で自動生成する建築を提案したいと思い、ペットというありふれた存在を用いることにしました。犬が、より社会に受け入れられた姿を想定しながら、犬と飼い主が共存し、犬との散歩を充実できる建築・都市空間を計画・設計していきました。具体的には、犬も入れる公民館と犬のケア施設の複合施設、犬の病院を主とする複合施設、ドッグランの3つの建築を歩行圏内に分散配置。人と犬が居場所を共有し、犬が自然に人と人をつなげる役割を担い、日常的な犬の散歩というアクティビティの延長線上に人々が集まることで、地域の賑わいに寄与する狙いがあります。
 設計のポイントは、道との関係を持った連続的な街並みを構成している点です。現代において道は主に移動のために用いられ、街は街区単位で構成されています。しかし、黒川紀章氏が『道の建築』でも書いているように、古くから日本の街は道から形成されるもので、町家も道と家の関係から生まれたものです。私は町家のようなものをつくりたいと思い、道との関係を持つように設計していきました。それは主に動線・表面の操作に表れています。そして、本提案では、犬という共有性の高いものが住民をつなげています。すると、道の質と価値は自然に高くなり、沿道の建築から道に対するアクションが生まれ、現代版町家が形成されるだろうと考えました。正直、共有性があればペットでなくてもよかったのですが(笑)。実際はペットが建築に与える影響は少なかったので、最後はかなり恣意的に設計することになりました。また街並みを形成させるプロセスまで設計できなかった事は大きな反省点として、次の課題にしたいと思います。

左図:動物病院アイソメ図(散歩の延長線上にある動物病院は、日頃の飼い主同士の情報交換やセミナーなどのその他のプログラムと複合して管理する)/右図:ドッグランの俯瞰パース

    

―どのような点が評価されたと思われますか。

 犬の散歩がアクティビティなので、屋外の設計が多く、設計した物がエクステリアのようになりました。加えて街というスケールから小さな犬のスケールまであらゆるもののスケールを設計することで、ある意味、インテリアから街までを概念的に連続するストーリーとして表現しています。そこが評価されたのではないかと思っています。最初からそういう提案の仕方をすれば、もっと良いものができたかもしれません。

 

―どんなところが建築の魅力ですか。

 今年の夏、ゼミ旅行で広島の尾道に行った時、昔ながらの街並みから、尾道の風土、文化、習慣、歴史などを間接的に知ることができました。建築や街はその機能以外に様々なことを私たちに教えてくれる知性の塊です。建築や街のそういう一面が好きですし、魅力だと思います。

 

―今後の目標や夢はありますか。

 建築を勉強すればするほど、不勉強を感じます。現実的な精度を挙げていくために、もっと知識を身につけたいと思っています。夢はまだ漠然としていますが、学んだことを活かして建築の設計をしていきたいです。できれば企画から設計まで携われるような仕事がしたいです。

 

―最後に、後輩の皆さんにメッセージをお願いします。

 何か新しい物をつくらないといけないと思い空回りしたり、迷いに迷いしっかり設計できずに不完全燃焼で終わってしまう人も多いように思います。しかし社会に出れば、限られた時間の中で設計し、それなりの物を作る事が求められます。そのための戦略を持ちましょう。時代がハードよりソフトを重要視してきたこともあり、私たちの世代はデザインが苦手な世代とよく言われます。ソフトはもちろん重要ですが、形にすることが私たちの仕事です。“臆せず、形にしていこう!”と伝えたいです。ソフトも知っている私たち世代が“形にする技術”を身につければ、向かうところ敵なしです。一緒に頑張っていきましょう。

日本大学工学部建築学科平成28年度卒業設計展で発表する佐々木さん

 

―ありがとうございました。今後益々活躍されることを期待しています。