防災に関する様々な取り組みや研究成果を発表し
災害対策の大切さを伝える

 9月11日(月)に新潟市にある東区プラザで『防災学習会~建築学生の観点から~』が開催され、学術文化サークルに所属する建築研究会災害対策研究班の学生たちが講師を務めました。このイベントは、日常の防災・減災をテーマに活動する『わいわい夢工房 “防災カフェ”プロジェクト”』が主催したもので、15回目となる今回は若者の意見を聞く機会を設けようということで企画されました。建築研究会会長の後藤寛尚さん(建築学科3年)は、南相馬市小高区出身で、中学3年の時に被災し、高校時代を新潟県で過ごしました。「地元の復興に携わりたい」という思いで、日本大学工学部に入学。建築研究会に入り、新たに災害対策研究班を立ち上げ、防災等に関する研究活動を進めてきました。そうしたことが縁で、同会に防災学習会での発表依頼がきたのです。防災学習会での発表内容や災害対策研究班の活動について、後藤さんに詳しくお話を聞きました。

 

―建築研究会および災害対策研究班はどのような活動を行っているのですか。

 私たち建築研究会は、日本大学工学部の前身である第二工学部が郡山市に設置された4年後の1954年に結成された歴史のあるサークルで、来年65年目を迎えます。近年の建築研究会の活動は、主に建築物の設計や歴史の研究、実際の建築物の見学などで、毎年その成果を北桜祭で発表していました。私が入部した1年生の頃は、『都市建築班』、『小建築班』、『洋館班』、『日本建築班』、『美術館班』の5つのグループに分かれており、それぞれの班でテーマを決め、それに副って実際に建築物を見学したり、文献を調査したりして作品づくりに取り組んでいました。しかし、私たち1年生部員の中には、震災に関心がありここで学びたいと考えて入学してきた人が多く、福島にいる学生だからできることに取り組みたいという思いがありました。そこで、1年生だけで、防災や復興について考えるための『災害対策研究班(DRM:Disaster Risk Management Lab.)』を立ち上げたのです。現在、『災害対策研究班』には、『地域防災』、『住環境』、『復興デザイン』の 3つの グループがあります。『地域防災』では主にキャンパス周辺の災害リスクの調査や、地域住民への災害意識の啓発、『住環境』では避難所の住環境の理想像を模索し、それに付随する避難所の運営者に対してのマニュアル作成、『復興デザイン』では、福島県南相馬市の小高区の復興について調査し、今後の地域社会の在り方についての研究など、それぞれが自主性をもって進めています。

 

―防災学習会では、どのようなことを実施したのですか。

 この防災学習会では、“建築学生の観点から”がテーマになっていましたので、それをしっかり伝えたいと考えました。主催者からの要望もあり、参加者との対話型の展示プログラムと災害対策研究班の活動を紹介する発表プログラムを企画しました。まず、建築研究会と災害対策研究班の紹介をし、『地域防災』、『復興デザイン』、『住環境』それぞれのグループ活動について、スライドを使いながら発表を行いました。続く展示プログラムでは、各パネルに13名の担当者をつけて、活動内容の詳細を説明したり、質問や意見に答えながら参加者との対話を深めました。
 地域防災グループは、大学周辺を歩いて聞き取り調査をしながら、避難時の妨げになりそうな場所を確認し、地図上にタグや付箋を用いて危険箇所を示した、『防災まちあるき』について説明しました。また、災害ポテンシャルの調査・研究のために、郡山市の地域模型を作成し、プロジェクターを用いて、災害情報の可視化を図ったプロジェクションマッピングを紹介。航空写真、水域図、洪水浸水想定区域図、ハザードマップ等のコンテンツを投影し、映像を用いることで問題の認識や、情報の共有等を図ることの重要性を伝えました。


 復興デザイングループは、南相馬市にある小高復興デザインセンターと協力して行っている様々な活動について紹介しました。同グループは、『高校生による小高区への提案事業』の企画提案のお手伝いや浦尻行政区の未来検討会に参加して空き地利用を提案するとともに、浦尻行政区の1/1300地形模型も製作しています。また、PNT(Print Next Troops)東北学生支援プロジェクト2016助成事業に採用され、小高区内で調査研究を行った『緊急時における避難経路の明確化』については、災害リスクをレイヤーで地図上に重ねて可視化した『逃げ地図』の作成も行いました。これらの活動を通して、地域住民・高校生・大学生がどのように連携できたかも発表しました。

 災害時の避難所や仮設住宅、復興公営住宅、車中泊について調査研究を行っているのが住環境グループです。実際に東日本大震災時の避難所となった『ビッグパレットふくしま』全体のスタディ模型を作って、どの時期にどのような問題が生じるのか避難所の時系列を研究しました。さらに、私が体験した避難所の生活空間を再現し、物資が不足する避難所で、身の回りにあるものを使って何ができるかを考えました。イベントでも同様に再現した展示を行い、避難所生活を体感していただきました。

 

―防災学習会を通して感じたことや得られたことは何ですか。

 当日の来場者は60名ほどでしたが、一般市民だけでなく建設会社の方や南相馬から避難している方、大学の教授や市議会議員、意欲のある学生などもいました。新潟の人は防災に高い関心を持っていて、こうした活動にも熱心な方が多いと思いました。「避難所の床で寝るのは辛いので、何かよい方法を研究してほしい」といった要望もありました。また、「放射線についてもっと考えてほしい」という意見もありました。建築を志す学生として、どのように学んでいくべきかを考えるよい機会にもなりました。地震もそうですが、水害にも見舞われる新潟と阿武隈川の氾濫が問題になっている郡山には共通点が多くありますし、新潟の復興から学ぶこともたくさんあります。実は、学習会の前々日から新潟に入り、中越大地震からの復興の状況などを見てきました。そのメモリアル拠点である4施設、3公園を結ぶ中越メモリアル回廊は、震災の記憶を残すだけでなく、地域の絆の大切さを伝えています。私たちの活動も地域のコミュニティをつなげていくことが目的の一つです。新潟の皆さんに災害対策研究班の取り組みについて知っていただきながら、私たち自身も新潟の地域防災活動について勉強にさせていただきました。大変貴重な経験であり、今後の活動にも活かしていきたいと思います。

 

―今後の抱負についてお聞かせください。

 災害によって起きる被害を減らしたり無くしたりすることが災害対策研究班の目標です。より安全な暮らしができるよう積極的に活動していきたいと思います。地域防災グループでは、新潟の地域防災活動を参考にして、郡山でも実践していきたいと考えています。復興デザイングループは、小高区だけでなく、様々な被災地にも活動を広げていきたいと考えています。住環境グループは、避難所のより良い運営の方法を提案いく予定です。工学部のサークルで、外部の財団から助成金を受け活動資金に充てた前例はないと聞いています。一人ではできないけれど、サークルだから、みんながいるからできることがあると思います。私たちの研究成果が地域の復興や活性化につながるよう、より一層尽力していきます。

 また、10月28日(土)、29日(日)の北桜祭では、防災学習会で発表した内容やその他の活動、取り組みを紹介する展示を企画しています。皆さんに建築研究会の活動そのものを見てほしいと思っています。場所は70号館2階です。建築や防災、復興に興味のある方は、ぜひ足を運んでみてください。

―ありがとうございました。今後の活躍も期待しています。

 

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