被災地の復興支援に携わり、商店街の活性化に貢献する

 建築学科2年の伊原明伸さんが、『復興・創生インターン』に採用され、福島県双葉郡浪江町の復興支援に貢献しました。この事業は、復興庁事業『伴走型人材確保・育成支援モデル事業』の1つであり、岩手県、宮城県、福島県の被災地企業を対象とした実践型インターンシッププログラムです。単なる就業体験に留まらず、被災地企業が抱えている課題に対し、経営者と協働して解決に取り組む実践型インターンシッププログラムであり、約1か月間、学生同士、共同生活を送りながら就業体験を経験することにより、キャリア観の醸成や課題解決能力の向上を図ることを目的としています。
 伊原さんは2017年度春期プログラムに参加。浪江町に約1か月間滞在し、被災地で復興に懸命に取り組む人々や、地域で活躍する人々と一緒に、様々な課題に挑戦しました。
 インターンを通してどのようなことを学んだのか、伊原さんにお話を聞きました。

 

―復興庁のインターンシッププログラムへの参加を決めた理由について教えてください。

 私は静岡県の出身ですが、高校の担任の先生に勧められて工学部に進学しました。せっかく福島県に来たのだから、ここでしかできないことをやりたいと思っていました。学術文化サークル連合会所属の建築研究会に入ったのも、その思いがあったからです。このサークルには郡山市等の災害の調査や対策を研究する災害対策研究班(DRM)があり、私は南相馬市小高区を中心に被災地の復興支援を考える復興グループで活動を行っています。復興庁のインターンシップについて知ったのは、建築研究会の先輩からの情報でした。1年次の授業『自主創造の基礎2(計画系)』で、震災後の富岡町の現状について学んだこともあり、もともと浜通りの復興に関して興味を持っていて情報収集していました。浪江町にも以前一度だけ行ったことはありましたが、インターン先情報を見て、ここならいろいろなことが経験できそうだと思いました。新しく活動地域を広げて、その地域との関係づくりをしたいと思い参加を決めました。大学生のうちに社会人としての経験も積みたいと思っていたことや、建築にも活かせる何かを学べるのではと考えたことも参加を決めた理由です。しかし、採用されるまでには何度も面接や書類審査があり、かなり厳しい選考でした。それだけに、生半可な気持ちではなく、自分の力でできることを精一杯やりたい、浪江町のことをたくさんの人に知ってもらいたいという決意で臨みました。

 

―インターンシッププログラムの内容について説明いただけますか。

 プログラムは、2月19日から3月16日までの期間、他大学の学生2名とともに実際に浪江町に滞在し、浪江町仮設商業共同店舗施設『まち・なみ・まるしぇ』の入客数を現状の2倍に増やし、活性化させることが目的でした。1週目は現状と課題を把握するために、お店の方やお客さま、役場の方にヒアリングを行いました。しかし、いろいろな意見が集まりすぎて方向性を見失ってしまったのです。2週目に入ってインターン生同士やまるしぇのお店の方とも話し合い、ポイントを絞った結果、『海鮮和食処 くろさか』の売り上げを2倍にすることを目標にしました。そのための方法として次の3点を課題としました。

  • 営業回転率を上げる ② 新メニューの開発 ③ 外部から客を呼び込む 

 回転率やお客さまの年齢層・居住地・来店理由などのデータを集めながら調査・仮説・検証・分析を行うとともに、回転率アップにつながる調理の効率化や店内の動線を図る方法を提案しました。また、3週目には期間限定で夜間営業を実施し、チラシを配付したりFacebookなどSNSでの情報発信も行いました。夜間営業によって売り上げはアップしましたが、従業員の確保が今後の課題となりました。
 新メニュー『海鮮にじいろ だし茶漬け』はインターン生で考案した丼です。震災の影響で停止してしまった請戸漁港への再開の想いを込めて、かつて獲れていた鮭やいくらなどの7種の魚介を使用しています。毎月1回、土日に開催される『まるしぇ』の時に、各日限定30食で販売しました。多くの方から「美味しかった!」と喜んでいただき、おかげ様で完売。その後は土曜限定メニューとして販売されることになりましたが、これは外部からの集客につなげるための策でもあります。
 最終週には、これまでの取り組みについてまとめる作業に入りました。プログラムの最後には1か月間の成果報告会を相双地域全体と浪江町単独で行いました。浪江の方では突っ込んだ質問もありましたが、住民の方の温かさを感じました。全体報告会では客観的に評価していただけてよかったです。修了証書をいただきプログラムは終了となりましたが、1か月の間にマーケティング、コンサルティング、商品開発、飲食店の接客、チラシ作り、ポスティングなど様々なことが経験でき、大変濃密な時間だったと思います。浪江町の方々、特にくろさか店主の黒坂さんには、大変お世話になりました。改めて浪江町の皆さまに感謝の気持ちを伝えたいです。

 

―インターンを通してどのようなことを学びましたか。また、これからどう活かしていきたいですか。

 トライ&エラーを繰り返しながら、日本大学の自主創造の精神でもある“自ら考え、自ら学び、自ら行動する”ことを実践し、その難しさと大切さを学びました。大学のキャンパスの中だけでは得られない経験だったと思います。それから、浪江町に住む方の生の声を聞けたのは大変貴重でした。復興が進んでいない状況でも、今の暮らしに不満を感じていないという声も聞かれました。それでも、「インターン生が周りにいい影響を与えている」、「いつでも第二の故郷として遊びに来て」という言葉を掛けていただき、とても嬉しかったです。だから、浪江町と大学生をつなげることが大切だ と実感しました。一過性ではなく、これから先、大学生と浪江町の継続的な関係を築いていきたいと考えています。建築研究会でも浪江町の祭りやまちづくりキャンプに参加したり、つながりを築いているところです。大学生が主体となって輪を広げていけたらと思っています。
 また、2年次前期の授業の課題では、郡山市内を敷地とする『3世代6人で住む2階建て住宅の設計』に取り組みましたが、浪江町での経験からコンセプトを導き、大堀相馬焼の工房を併設した住宅を提案しました。自分の作品を通じて他の学生たちに浪江町のことを少しでも知ってもらいたいと考え、作品を制作しました。学内だけでなく、オープンキャンパスでの作品展示により、高校生やご父母の方にも紹介することができました。こうして浪江町のことを広めていくと同時に、大学で学んだ知識を活かして浪江町に貢献できるように、建築の専門的な勉強にも力を入れていきたいです。就職したらこうした活動はできなくなると思うので、今、日大工学部の学生だからできることを考え、実践していきたいと思います。

 

―ありがとうございました。今後の益々活躍されることを期待しています。

 

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