病気の早期発見につながる塩基識別能を持つ
蛍光DNAプローブの開発研究が高く評価される

 9月15日、16日に秋田大学手形キャンパスで開催された平成30年度化学系学協会東北大会において、生命応用化学専攻博士前期課程2年の栁昌樹さんが優秀ポスター賞を受賞しました。本会は会員約3万名を擁するわが国最大の化学の学会である公益社団法人日本化学会。本会はその東北支部が主催するものです。ナノバイオ研究室に所属する栁さんが発表した『Development of a novel fluorescent benzo[g] imidazo[4,5-c]quinoline nucleoside for monitoring base-pair-induced protonation with cytosine』は有機化学分野での受賞となりました。
 栁さんに受賞の喜びと研究について詳しくお話を聞きました。

光化学や生物学など幅広い分野の研究者から注目を集めています。

 

―優秀ポスター賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。これまで英語でのポスター発表も含め何度か学会で発表する機会はありましたが、受賞したのは初めてで、賞をいただき大変驚いています。ですが、自分の研究が評価されたのは、やはり嬉しいです。今後も学会での発表の機会があれば、賞をいただけるよう頑張りたいと思います

 

―研究について詳しく説明いただけますか。

 私が取り組んでいるのは蛍光核酸塩基に関する研究です。DNAは、チミン(T)・アデニン(A)・シトシン(C)・グアニン(G)の4種類の塩基と呼ばれるもので構成されており、2本の鎖が二重螺旋を形成しています。通常DNAは、この塩基が決まったペアを組みます。しかし、様々な要因でこのDNAが特定のペアを組まなくなります。こういった一部の変化を見ることにより疾病リスクなどが分かります。近年、タンパク質や核酸などの生体分子を蛍光標識し、それら生体分子の構造、相互作用や結合状態などを直接観察するためのツールへと応用する研究が盛んに行われています。私たちナノバイオ研究室は、この一塩基の違いを蛍光発光の変化で識別できるDNAプローブの開発を行ってきました。その中の一つとしてこれまでに、環境感応型の蛍光性7-デアザ-2′-デオキシアデノシン(7zA)や3-デアザ-2′-デオキシアデノシン(3zA)の誘導体を報告し、蛍光発光の変化からDNA二重鎖中の一塩基の変異を識別することに成功しています。一方、非蛍光性の 7zA 誘導体や、3zAのDNA二重鎖中での塩基対形成能について報告された事例があり、pHを変えることでアデニンはチミンと結合したり、シトシンと結合できるというものです。このような特徴的な性質は、蛍光DNAプローブのデザインに応用可能であると考えられます。
 そこで私たちは、benzo[g]  imidazo [4,5-c] quinoline nucleoside (BIQA)のN1位プロトン化に着目しました。N1位のプロトン化/脱プロトン化により蛍光発光が変化するような蛍光性デアザアデニン誘導体の開発を試み、DNA導入後、対面塩基の識別を観察しました。その結果、対面塩基がチミンの時とシトシンの時で発光波長が変化し高感度に識別ができる結果となりました。

 

―どのような点が評価されたと思われますか。

 一番注目された点は、塩基識別だと思います。pHの変化でDNAの安定性が変わったり、蛍光波長の変化もあり、識別能が高かったのが評価のポイントになりました。今までにない研究なので、そこが注目を集めた点だと思われます。ポスター発表には、光化学や生物学など様々な分野の研究者が聞きに来られました。異なる分野の研究者にも自分の研究を上手く伝えられたのも良かったのかなと思います。

 

―今後の目標についてお聞かせください。

 現在も対面塩基識別の研究を進めています。新たな蛍光分子を合成することによって識別能を高める研究に取り組んでおり、蛍光分子を1つ導入した場合と2つ導入した場合の分析をしています。より簡便で高感度に識別することが最終的な目標です。

化学反応式の矢印は、その先にある未知の世界への道しるべ。
だから探求心や好奇心が深まるんです。

 

―化学の道を選ばれたのはどのような理由からですか。

 もともと化学は好きで、生命応用化学科なら幅広い分野を学べるだろうと思って選びました。いろいろ勉強していくうちに興味を持ったのは有機化学でしたが、この研究室は有機化学だけでなく光化学や生物分野にも関連しているので、幅広く学べるところが魅力です。自分の手で新しい化合物が作れるだけで面白いし、実際にどういう効力があるのかを調べて、それがどう世の中に役立つのかも分かるから、研究も益々楽しくなります。社会に出たら化学の道で、ここで学んだ知識を活用しながら、新しいことを吸収していきたいと思います。

 

―後輩たちにメッセージをお願いします。

 化学は矢印で表される化学反応式を学ぶだけだと思っているかもしれませんが、実際に大学で化学に触れると、何かしらの反応があり、できたものには特性があります。自分が作り出したもの、それは世の中では様々な利用価値が存在します。なので、探求心や好奇心が深まります。まずは気になることをやってみる。失敗を恐れず諦めないで挑戦することが大事です。これは使わないと思っていた知識でも、突如必要になることもあります。そういう意味でもいろいろな知識を身につけておくのが良いと思います。

 

―ありがとうございました。今後益々活躍されることを期待しています。

 

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