第一線で活躍するプロの建築家による講評会が行われ
最優秀作品1点にJIA福島地域会賞が贈られました

『平成29年度日本大学工学部建築学科卒業設計作品展』が、2月20日(火)から22日(木)に、郡山駅前のビッグアイ6階市民ふれあいプラザにて開催されました。学内審査によって選ばれた8作品が展示され、一般の方々にも広く学修成果をご覧いただきました。初日には、11名のJIA(公益社団法人 日本建築家協会)福島地域会員の建築家の方々による講評会も行われ、審査員投票により最も優れた作品1点にJIA福島地域会賞が贈られました。第一線で活躍するプロの建築家を前にプレゼンテーションを行う学生たちは緊張しながらも、作品に込めた思いを伝えました。学生たちの奮闘ぶりとともに、展示された8作品について紹介します。

 

『中道―段階的建築群―』 青木 雄大さん

 津波の襲来が想定される沿岸部において、土地勘のない人でも迅速に避難できる避難経路と合わせて、開発によって薄れた地域の特色を再構築する糸口となるような、非常時と日常の双方に対応した建築空間を提案した。

 

『系譜の音―ハタオリを続ける町―』 遠藤 尚弥さん

 地方都市の産業衰退が進む中、山梨県西桂町の機織りを保存し、存続する媒体となる仕掛けとして、「技術の伝承」と「保存の場」のための滞在型「ハタオリミュージアム」を提案。子どもたちに紡がれる町の在り方も再考した。

 

『写真の住処―写真たちの物語―』 佐藤 太寿さん

 プロの写真家である祖父とともに写真本来の在り方を模索し、建築物として具現化、更に持続可能な店舗としての活性化を試みる。祖父の写真とカメラ、桑折町の写真を展示する空間を増設した店舗併用住宅を提案した。

 

『細解発―衰退した温泉街の再生―』 福田 晴也さん

 温泉地としての面的な魅力に立ち戻り、観光客の湯めぐりや地域住民へのサービス空間、周辺の観光資源を手掛かりにそれらをネットワーク化し、廃墟化した温泉街を再生する一つのモデルとして飯坂温泉を題材に提案した。

 

『わんどのがっこ―65歳から始まる大人の学校―』 川村 秋奈さん

 通常の介護としての「してもらう」から、「自分でする」空間を提供することで高齢者の認知症の治療・在宅復帰を目指す学校形式のデイサービスを提案。高齢者の意欲や生きがいにつながる空間や交流の場を提供している。

 

『モヤイの航海―塩から始まる島の未来―』 柳沼明日香さん

 塩業を介して島の伝統文化や根付いてきた営みを、島民や島外の人を巻き込みながら再構築し、塩田の織りなす建築の可能性を提案。製塩の工程細分化、技術の伝承、港の再編から、伊豆諸島全体の島の未来を考える。

 

『大築島―島の修復―』 武井 碩毅さん

 近代産業発展の裏で、ないがしろにされた自然や文化、産業を守りつつ、失われたものを再認識できる施設を提案。凌渫土を利用し山を復元させ、造成後もベルトコンベヤを導線とするミュージアムを設計し、モニュメント化した。

 

『失明した文明―アンリアルなリアリティが現す、時代の表層―』 北沢 汐瀬さん

 情報化したことで、見えていない情報の世界を身近な建築という実態を持つものに置き換えることで、スケールの錯綜、選択の思惟、境界の不定といった情報社会に対して向かい合えるような問いを提示する設計を提案した。

 現場を知るプロの目線で見られる中で、学生たちは作品の意図やどのように表現したかを伝えようと懸命に説明しました。審査員の皆さんもその着眼点に驚嘆しながら、一人ひとりの発表に真剣に耳を傾けてくださいました。学生ならではの挑戦的な提案や学生らしからぬ説得力のある提案など多種多様で、見応えのある審査会となりました。

 各作品のプレゼンテーションが終了したのち、公開審査が行われました。プロはどのような点を評価し、何を重視するのか、貴重な意見を聞ける絶好の機会とあって、学生たちも一喜一憂しながら審査の様子を見守っていました。提案価値の高い作品が多く、一つに絞れないという審査員の方もいる中で、最後は挙手による投票により最優秀作品1点が選ばれました。最多票を獲得したのは、柳沼明日香さんの作品『モヤイの航海―塩から始まる島の未来―』。見事、JIA福島地域会賞に輝きました。受賞した柳沼さんは、「ご指導してくださった先生・先輩方、手伝ってくれた後輩、そして一緒に設計した仲間たちにとても感謝しています。プロの方々の厳しいご意見や貴重なご意見について、自分なりにじっくり考えて、必ず次回につなげたいです」と作品づくりに意欲を燃やしていました。

 JIA福島地域会長の三瓶一壽氏(写真右)からは、「今年度は甲乙つけがたいほど全体的にレベルが高くて評価に苦しみました。賞に選ばれた作品は大変素晴らしく、このまま地域に提案してもらいたいくらいです。他にもコンセプトやストーリー性に優れた作品が多くみられました。是非とも設計の世界で頑張ってほしいと思います」と高い評価をいただきました。この場をお借りしまして、審査に携わっていただきましたJIA会員の皆様に厚く御礼申し上げます。

 皆さんは4年間の集大成として取り組んだ卒業設計で、その成果を存分に発揮されたことと思います。ここから先は、それぞれが選んだ道を歩むことになりますが、培った経験を活かして、益々活躍されますよう祈念しています。