光エネルギー変換研究室の院生2名の発表が高く評価される

 9月16日(土)、17日(日)に開催された平成29年度化学系学協会東北大会 物理化学分野で、生命応用化学専攻博士前期課程2年の榎木正美さんと橋本正明さんが優秀ポスター賞を受賞しました。本会は公益社団法人日本化学会東北支部が主催するもので、今年のポスター発表は40件(物理化学)あり、そのうち学生が発表したポスターの中から特に優れた発表者6名に対してポスター賞が授与されました。2人は光エネルギー変換研究室に所属していますが、異なる研究テーマで発表を行い、それぞれ高い評価を得ました。
 2人に受賞の喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。

「ローダミンB会合体の励起緩和過程」の研究により、色素分子の発光計測に成功     

榎木 正美さん(博士前期課程2年・光エネルギー変換研究室)

 私たちの身の回りのものが様々な色で彩られているのは、色素分子のおかげです。色素は、液晶テレビをはじめ、多くの工業製品で使われていますが、状況に合わせた色を発色させ機能を持たせるためには、色素分子の構造・状態を詳細に知る必要があります。今回の研究では、ローダミンBと呼ばれる赤い色素分子の発光効率を制御する機構について調べました。
 まず、溶液中の濃度の違いによって発光の仕方が違うことに着目しました。濃度が高い時は蛍光体の発光強度(発光効率)が低下する濃度消光という現象が起きます。濃い時は、光りにくい色素同士が集まった二量体を形成するためだと考えられます。なぜ光らないのか、そのメカニズムを解明しました。濃度が高い場合、手前の分子が発光しても、奥の分子が蛍光を再吸収してしまうために、消光が起こります。そこで、再吸収を防ぐ方法について検討し、次の2つの方法を考案しました。 ①試料溶液の厚さを薄くする(髪の毛太さの50分の1程度)。 ②測りたい分子と分子をつなげて二量体にする。 これらの方法で実験を行いました。実験に使う分光装置の設計は、自作したものです。 ①の場合は、濃度が高くても再吸収を除去することができ、発光の計測もできました。②の場合は、濃度が低くても隣に分子がいるため二量体ができました。これまで信頼できる計測ができなかった色素会合状態の非常に弱い発光の計測に成功したのです。

                         

 2つの違う視点で実験を行い、同じ結果が得られたことで、より信頼度の高いデータを示すことができました。これは大きな成果でした。今回、その点が高く評価されたのだと思います。これまで、ポスター発表は10回ほど行ってきましたが、聞き手が何を求めているのか、どう説明すれば理解してもらえるかが分かってきました。プレゼンテーション能力が身についたことも、受賞につながる要因になったのかもしれません。最初は賞をいただいたことに驚きましたが、やっと努力が実ったのだと思うと、感無量です。
 化学は好きですが、得意というわけではありません。でも、実験すれば必ず何か化学反応が起こり、それを目で見てわかるところに面白さを感じています。この研究は、和光純薬工業株式会社との共同研究なので、企業の方に相談したり、実験結果を報告したりしながら進めていますが、要領が悪くて手順をミスすることもあります。もっと手際よく効率よく進められるよう、スキルを高めたいと思っています。

「フッ素置換ジフェニルヘキサトリエン結晶におけるシングレットフィッション速度の温度依存性」の研究で、新しい材料探索の指針を示す

橋本 正明さん(博士前期課程2年・光エネルギー変換研究室)

 光は、エネルギーを持った粒子(光子)と考えることができます。そのため、太陽電池では一つの光子から一つの電子が作られることになります。もし1つの光子で2つの電子ができれば、より効率の高い太陽電池を作ることができると考えられます。このような夢の材料として注目されているシングレットフィッション材料ですが、シングレットフィッションのメカニズムはまだ解明されていません。そこで今回は、この現象が起こる過程の速度と温度に注目して研究を進めました。実験の結果、ジフェニルヘキサトリエンにフッ素を置換した中で、平行構造の方はシングレットフィッション速度の温度依存性が見られ、互い違いになった構造の方は見られなかったのです。平行構造は熱による振動によって構造が崩れるからだと考えられます。また、平行構造は温度が高いとシングレットフィッション速度が速く、低いと遅くて、互い違いの構造は温度による速度の違いはありませんでした。変化を詳細に測定することで、反応性が結晶中の分子の並び方に大きく依存するという事実を見出したのです。互い違いの構造は温度に依存せずシングレットフィッション速度が変わらないので、デバイス化した時に適していることを示しました。これにより新しい材料探索の指針が得られたと思っています。

                         

  この研究は、分子の骨格を変えずに結晶構造を制御したことが大事なポイントです。そして、系統的に評価できた点も価値があると思います。賞をいただけたということは、役立つ研究だと評価された証ですから、喜びもひとしおです。また、研究するにあたり、ご指導いただいた加藤隆二先生をはじめ、いろいろな方にお世話になりました。そのおかげで受賞できたものと感謝しております。本研究は産業技術総合研究所との共同研究のため、精度の高い実験結果を求められます。いかに効率よく進められるかといった、仕事の段取りも学ばせていただきました。成果が出たことで、こうして学会で発表する機会も得られ、様々な分野の研究者と議論できたことは大きな収穫でした。今後は、フッ素以外の置換体を用いて、シングレットフィッションの研究を系統的に行っていきたいと考えています。

 高校の時は電子科を専攻していましたが、光エネルギーに興味を持ち、加藤先生の太陽電池の研究に自分も携わりたいと思い、生命応用化学科に進みました。期待が高まっている太陽電池の研究に、ゆくゆくは自分の名を残せたらいいなと思っています。そんな夢のようなことが叶うかもしれないところも、化学の魅力です。

 

―ありがとうございました。二人の今後の活躍も期待しています。

 

光エネルギー変換研究室はこちら