固体高分子型燃料電池(PEFC)に利用する
非白金触媒の開発研究が評価される

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 涌澤さんに喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。

 

―優秀ポスター賞受賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。ポスター発表自体も初めての経験でしたが、緊張もせずに普段通りに発表ができたと思います。しかし、まさか取れるとは思っていませんでしたので、いまだに実感がないというのが正直な気持ちです。注目される研究内容だったことが受賞につながったのだと思います。ご指導いただいた根本修克教授や共同研究者の企業の方々に感謝いたします。

 

―研究について詳しく説明いただけますか。

 現在、地球温暖化や化石燃料の枯渇といった問題が危惧されている中、燃料電池は高効率でクリーンなエネルギーが供給できることから注目を集めています。特に、固体高分子形燃料電池(PEFC)は、室温で作動し、小型軽量化できるという利点があり、近年、電気自動車の燃料電池として実用化が進んでいます。しかし、PEFCは正極のエネルギー変換効率が低いので、希少かつ高価なプラチナを含有する白金触媒が使用されているため、コストを削減できる安定で高活性な非白金触媒の開発が求められています。
 h28%e5%8c%96%e5%ad%a6%e7%b3%bb%e5%ad%a6%e5%8d%94%e4%bc%9a%e6%9d%b1%e5%8c%97%e5%a4%a7%e4%bc%9a%e5%84%aa%e7%a7%80%e3%83%9d%e3%82%b9%e3%82%bf%e3%83%bc%e8%b3%9eimage003非白金触媒に求められる条件として広い表面積、高い炭素含有率、高い導電性、金属を固定化する配位子を持つことなどが挙げられます。そこで注目したのが金属フタロシアニンです。金属フタロシアニンは、フェノール樹脂のように高い炭素含有率を持ち、ポリアニリンのように金属を固定できる窒素原子を持つといった性質があります。金属フタロシアニンを用いることによって、金属含有率の高い炭素触媒の創製が可能になると考えました。
 本研究では、金属フタロシアニンが連なったポリ金属フタロシアニンを合成し、焼成により得られる非白金触媒の電気化学特性について検討しました。焼成前と水素雰囲気下900℃で3時間焼成を行ったポリ金属フタロシアニンの電気化学特性を示したのが、左のグラフです。グラフから焼成を行うことで、還元反応開始電位、電流値ともに高くなっていることがわかります。特にポリコバルトフタロシアニンは500mVで酸素還元反応が開始されており、ほかの金属にくらべ、優れた値を示しましたが、白金触媒と比べると、電流値は白金触媒の方が高い値を示しました。次に王水処理による酸処理を行い、電気特性の測定を行いました。900℃で焼成後、酸処理をした各触媒の電気特性を測定した結果が右のグラフです。王水処理によって触媒活性が向上したものの、ポリコバルトフタロシアニンに関しては触媒活性の向上がほとんどありませんでした。その中でも、コバルトを含有するポリフタロシアニンが最も優れた触媒活性を示しました。これらの結果から、焼成を行うことで触媒活性の向上すること、今回使用した金属の中ではコバルトが最も高い触媒活性を示すことがわかりました。

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―どのような点が評価されたと思われますか。

 焼成の前駆体としてポリ金属フタロシアニンという取り扱いにくい錯体を使っているので、構造自体がユニークで注目されたのではないでしょうか。また、本研究は企業との共同研究であり、固体高分子型燃料電池への実用化につながる今後の成果を期待されてのものだと思います。

 

―どんなところが研究の魅力ですか。

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―今後の目標についてお聞かせください。

 今回作ったフタロシアニンに導電材のカーボンブラックを入れたら、電気特性が向上するのではと考えています。フタロシアニンは色合いが鮮明で耐久性も高く、以前は新幹線のボディにも使われていたように、いろいろな用途への応用が期待できます。将来、化学系の企業に就職できるよう、合成技術を磨いていきたいと思います。

 

―ありがとうございました。今後の活躍も期待しています。

 

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