研究助成事業に採択され、1年間の研究成果を発表

 平成22年度㈶理工学振興会による研究助成事業(満30歳以下の大学院生・助教・研究生等対象)に採択された、 物質化学工学専攻(平成22年度修了)外崎亜季さんの「ヒドロキシ酸を含むハフニア薄膜による新規Petal Effect機能の研究」。その研究成果をこの度、発表しました。
 財団法人理工学振興会は、理科・理工学に関する研究および教育研究の助成を通して理工学に振興するとともに、先端技術の向上を目指し、優れた研究者に対し助成金を贈呈しています。当時、まだ大学院1年生だった外崎さんが採択されたのは稀なケースのようで、贈呈式では採択者27人を代表しその抱負を発表する大役も任されました。研究は平成22年度の1年間にわたり続けられました。

 

■バラの花びらとは違うペタルエフェクトを実現

 ナノメートルの薄い膜であるハフニア薄膜は、鉛筆硬度が9H以上の高硬度膜であり、接触角が約90°で高い撥水性があることを、機能性材料研究室では今までの研究によって明らかにしてきました。さらに外崎さんは、ヒドロキシ酸を使うことで新たな表面機能が期待できるのではと考え実験を試みたのです。
 まず、ヒドロキシ酸としてグリコール酸および乳酸を含むハフニア薄膜を作製。ハフニア膜の作製には、ゾルーゲル法を使いました。ゾルーゲル法とは、金属化合物を加水分解してゾルというゼリー状の液体を作り、そこからいろいろな機能(働き)を持つ材料をつくる方法です。ガラス基板上にゾルを滴下して、基板を高速で回転させて塗布するスピンナー法という方法により、薄い膜(薄膜)を作ります。それに紫外線をあてることで、ハフニア同士がよりくっつきやすくなり、高硬度の薄膜が完成します。こうして作製したハフニア薄膜の構造と硬度、撥水性、滑水性および水滴の付着性などの表面機能について調べました。

 すると、斜めにしても180度ひっくり返しても、水滴が落ちませんでした。水滴の付着力が非常に高いという特徴的な結果が得られたのです。これは、水を弾く(超撥水性)のに、表面にくっつける(水滴付着性)という、バラの花びらに見られる「ペタルエフェクト」現象に似ています。ただし、バラの花びらとは違い、表面に凹凸がない平坦な膜で、なぜこのような現象が起きたのか非常に興味深く、新規ペタルエフェクトではないかと考えました。そこで、さらに考察した結果、ヒドロキシ酸の親水性基と水滴の水分子が水素結合を形成することにより付着性が高くなったことがわかりました。
 こうした実験結果から、傷がつきにくく、水をはじくハフニア薄膜の特性を活かして、さまざまな用途に利用できるものと考えられます。例えば、携帯電話の液晶ディスプレイや、自動車の窓ガラスのハードコート膜などです。しかし、外崎さんはもっと別な利用法について検討しました。
 自然界の仕組みからアイデアを見つけるバイオミメティックスという研究分野があります。生物が持つ優れた機能を人工的に創りだし応用する化学の新しい領域です。そこで注目したのが、砂漠に生息するサカダチゴミムシダマシ。逆立ちしながら親水性のある背中の突起の先端に霧を付着させ、効率的に水滴を集めて飲むというユニークな昆虫です。この特性を応用して、外崎さんは、新たな研究を進めました。その内容については、工学部広報No.231に掲載されています。工学部ホームページからも閲覧できますので、是非ご覧ください。

 

■研究を通して学んだこと

外崎さんからのメッセージ―

 ただ実験して検証するだけでなく、研究を実社会に応用できるところまで成果を得られたので、やはり大学院まで進んでよかったと実感しています。学部生の頃は、実験結果をそのまま先生に報告するだけでしたが、院生になってからは、自分の頭の中で結果を考察し咀嚼してから、先生に相談するようになりました。研究に対する責任感も芽生え、後輩たちの研究につながる成果を出そうという意識が実を結んだのだと思います。
 今、直面していることに対し、当たり前のことと思うか、好機と思うか、その気づきのような観察力が、研究においても人生においても、重要な鍵を握ることを学びました。
 運は自分で切り拓くもの。やりたいと思ったことは、頑張ってやり遂げるよう努力することが大切です。その先に幸運が待っていると思います。