ロハスの花壇を使った排水処理システムの研究が
学会で高く評価され優秀発表賞に輝く

第50回日本水環境学会年会優秀発表賞image001 3月16日(水)から18日(金)に徳島市で開催された第50回日本水環境学会年会において、博士前期課程土木工学専攻2年の大附遼太郎さんが年会優秀発表賞(クリタ賞)を受賞しました。日本水環境学会年会は(公社)日本水環境学会の全国大会に位置づけられる学術発表会です。本賞は、口頭発表を行う博士前期課程(修士課程)在学の学生会員を対象に、講演要旨原稿の内容に基づく一次審査、そして、一次審査通過者が行うポスター発表に対し学会参加者が投票を行う二次審査により、受賞者が決定されます。表彰対象者174名の中で一次審査通過者は43名、そして受賞者は16名であり、『学生食堂排水を処理する花壇型人工湿地の運転開始から1年間の水質浄化特性』について発表した大附さんは、約11倍の競争倍率を乗り越えての受賞となりました。

 大附さんに受賞の喜びと研究について詳しくお話を聞きました。

―優秀発表賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

第50回日本水環境学会年会優秀発表賞image004 ありがとうございます。ポスター発表は2回目ですが、賞をいただいたのは今回が初めてでしたから、受賞したときは驚きました。他の方々の素晴らしい発表の中で、自分の研究が評価されたことは大変光栄なことですし、自信にもなりました。
 受賞できたのは指導教員である中野和典先生や、私の研究生活を支えてくれた環境生態工学研究室の仲間、そしてなによりも温かく見守ってくれていた家族のおかげだと思っています。このような大変立派な賞をいただけたことを励みに、今後の研究活動に励んでいきたいと思います。

―研究内容について詳しく説明いただけますか。

 第50回日本水環境学会年会優秀発表賞_ロハスの花壇今後、家庭から出る生活排水の処理方法について検討したとき、日本の人口は2050 年には約25%減少することが予測され、人口密度は減少する一方、一人当たり利用可能な土地は増加するため、生活排水の小規模分散処理の重要性と適用性が高まると考えられています。加えて、地球温暖化の原因となるCO2等の温室効果ガスへの対策として、低炭素化の推進が望まれています。そこで本研究室では、小規模分散処理の高度化と低炭素化を家庭の庭で実現する花壇型人工湿地(ロハスの花壇)を開発しました。汚水処理を目的として造られた人工的な湿地であり、汚濁浄化性能を強化することで、従来型の活性汚泥法と同等の浄化性能を持つことに成功しました。人工湿地の浄化機構は、ろ材による吸着やろ過による物理的除去と微生物が汚濁を分解する生物的除去の2段階の作用が繰り返し行われる仕組みになっています。また、花壇を人工湿地化する利点として、一般家庭の庭や公園の花壇等で高度処理を行えるだけで第50回日本水環境学会年会優秀発表賞image008なく、緑化に必要な水と肥料が生活排水等で賄えられ、排水を核とした新たな水と栄養の循環の道が切り開かれる点が挙げられます。
 この花壇型人工湿地は5段から成る多段型人工湿地であり、重層型構造によりマイナス66%の省面積化を実現することができました。また、消費電力は1日6分または10分の揚水ポンプの動力のみで、ポンプで揚水した学生食堂排水を最上部より流入し、自然流下により5段のろ床を通過することで浄化が行われます。

―どのような成果が得られましたか。

 この花壇型人工湿地に学生食堂排水を流入させる浄化実験を2014年7月24日から開始し、運転開始から1年間の水質浄化性能と特性を明らかにするとともに、その省エネルギー性について浄化槽との比較評価を行いました。その結果、水質の指標であるBOD(生物化学的酸素要求量)及びケルダール窒素ともに年間の平均では90%以上の除去率となり、好気的処理が高いレベル第50回日本水環境学会年会優秀発表賞image009で行われたことが明らかになりました。T-N(全窒素)及びT-P(全リン)では一時期除去率が低下しましたが、年間の平均では、ともに約75%となり、栄養塩の高度処理も行えていたことが確認できました。さらに、5社11機の5人槽の浄化槽公表値と比較したところ、花壇型人工湿地では処理BOD1gあたりの消費電力は浄化槽の約18分の1という結果になり、格段に省電力で高度処理が行えることも確認できました。

―どのような点が評価されたと思われますか。

 まず、コンパクトな構造をしていることが注目を集めたのだと思います。通常の人工湿地ですと、広い土地が必要となりますが、この花壇型人工湿地は家庭に設置することを目標としているため、専有面積を大幅に縮小させています。加えて、5人槽の浄化槽公表値と比較して、格段に省電力で処理を行えたことも評価された点だと思います。このような新しい発想と将来性も含めて受賞につながったと考えています。

―どんなところが研究の魅力ですか。

第50回日本水環境学会年会優秀発表賞image011 研究の魅力は、突き詰めていくところにあると思います。研究をしていく中で、思い通りにいく時もあれば、うまくいかないこともあります。しかし、うまくいかなかったらそれで終わりではなく、その原因について考察する必要があります。原因について追及していく過程で様々なことを調べるのですが、このときに自分が今まで知らなかったことを新たな知識として得ることができます。同時に、私は“研究が楽しい”と感じるのです。また、そういったどこまでも突き詰めていくことができる点が研究の魅力だと思います。

―今後の目標についてお聞かせください。

 今回の学会で多くの方々からご指摘とご助言をいただいたので、それを基に研究を進めたいと思います。また、実験開始から2年間のデータを基に、課題を明確にして改善しながら、花壇型人工湿地のガイドラインの原案を作成したいと考えています。

―最後に後輩たちにメッセージをお願いします。

 私は4年生のとき、大学院に進学するか就職するか迷いました。しかし研究を始めて、もっと研究したいと思い大学院に進学しました。実際に、キツイと感じたことも少なくなかったのですが、後輩を持つことでリーダーシップを身につけることができたのは大きな収穫です。皆さんも研究をやってみて興味が出たら、大学院に進学してほしいと思います。

―ありがとうございました。今後の益々の活躍を期待しています。

 

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