イオン液体のCO吸収特性を明らかにする研究で
3年連続優秀講演賞受賞の快挙!

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 渡邊さんに受賞の喜びの声とともに、研究について詳しくお話を聞きました。

 

―優秀講演賞受賞おめでとうございます。どのような点が評価されたと思われますか。

 ありがとうございます。3年連続受賞できて、大変光栄です。指導教員の児玉大輔先生や研2016%e5%8c%96%e5%ad%a6%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e4%bc%9a%e7%ac%ac48%e5%9b%9e%e7%a7%8b%e5%ad%a3%e5%a4%a7%e4%bc%9a%e5%84%aa%e7%a7%80%e8%ac%9b%e6%bc%94%e8%b3%9eimage002究室の後輩、共同研究者の皆さまのおかげだと思っております。予測していた結果ではなかったものの、なぜそうなったのかという考察がしっかりできたことや、結果を踏まえて次にどうつなげていくかを明確に提示できたことが評価されたのだと思います。論文等での報告例が少ないプロトン性アミド型イオン液体に着目した点も新鮮だったのかもしれません。今回の結果にではなく、今後に期待を込めていただけたものと肝に銘じて、より一層研究に励みたいと思います。

 

―受賞された研究の内容について詳しく説明いただけますか。

 現在問題となっている地球温暖化による気候変動を防止するためには、CO2をはじめとする温室効果ガスの排出を抑制する必要があります。CO2を分離・回収する技術の一つとして、イオン液体を吸収液として利用する方法が提案されています。イオン液体は揮発しにくく、難燃性で、酸性ガスを選択的に吸収する性質を持っているので、既存の吸収液では0℃以下で行っていたCO2吸収工程を室温以上で行えるため、低エネルギー化につながるという利点があります。私が所属する環境化学工学研究室では、独自に開発した『ガス溶解度測定装置』を使って、効率よくCO2を分離・回収できるイオン液体について研究を進めています。2016%e5%8c%96%e5%ad%a6%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e4%bc%9a%e7%ac%ac48%e5%9b%9e%e7%a7%8b%e5%ad%a3%e5%a4%a7%e4%bc%9a%e5%84%aa%e7%a7%80%e8%ac%9b%e6%bc%94%e8%b3%9eimage0032010年には、私たちが注目したプロトン性アミド型イオン液 体が、それまでの文献で吸収量が多いと言われていたイミダゾリウム系のイオン液体よりも、単位体積あたりのCO2吸収量(体積濃度)に優れることを報告しました。これまでの研究で、イオン液体のマイナスイオン(アニオン)を変更すると、CO2溶解度が大きく変わることが明らかになっていますが、プラスイオン(カチオン)の構造を変えることに着目しました。そこで本研究では、カチオンが大きくなることで、溶解度が増えるという仮説を立て、カチオンのアシル鎖伸長がCO2吸収に及ぼす影響について検証を行いました。

体積濃度
(単位体積あたりのCO2吸収量)

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空隙の大きさとCO2吸収量の関係

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 カチオンのアシル鎖長を変えた3種のイオン液体について、それぞれCO2の吸収量を測定しました。すると仮説に反して、カチオンの大きさに比例せず、アシル鎖長が短いものが最も高いCO2吸収量を示し、長いもの、中間のものの順に減少する結果となりました。この序列は、理論的に計算したイオンとイオンの間にあるすき間(空隙)の大きさの順と一致しました。CO2は、イオン液体中の空隙に入り込み、吸収されることから、空隙が大きい順にCO2吸収量が高くなったと考えられます。

 

―産総研イノベーションスクールでの研究成果ということですが、どんなスクールなのですか。

 このスクールは、産総研の人材育成制度の一つです。私は大学院生対象のDCコースを受講し、産総研つくばセンターでの講義・演習と東北センターでの研究機会をいただきました。共同研究者である産総研の金久保先生(写真前列中央)から推薦いただき、昨年の後期コースから2016%e5%8c%96%e5%ad%a6%e5%b7%a5%e5%ad%a6%e4%bc%9a%e7%ac%ac48%e5%9b%9e%e7%a7%8b%e5%ad%a3%e5%a4%a7%e4%bc%9a%e5%84%aa%e7%a7%80%e8%ac%9b%e6%bc%94%e8%b3%9e参加しています。化学や生物、バイオ、半導体、地質など様々な分野のポスドクや学生が参加しており、企業や産総研の研究員の方からの研究・キャリアプランに関する講義を聴講した他、マナ ー研修、プレゼンテーション研修、グループワークやディスカッションなどを通して交流しました。また、産総研の実験装置を使った電気伝導度の測定など、研究室ではできない実験も体験し、プロの研究者やテクニカルスタッフの手際の良さに圧倒されましたが、なんとかついていくことができました。本スクールの活動は、研究面だけでなく、社会人としての視野を広げる良い機会にもなり、大変充実した研修でした。

 

―博士後期課程まで進んだ理由は何ですか。

 高校生の時から研究職に就きたいという思いを持っていたので、大学院進学を視野に入れて大学に入りました。研究に取り組んでいくうちに、今まで使ったことのない装置や試料を用いて、より深く探究したいと考えるようになりました。研究を通して、新たな考え方、深い洞察力、幅広い視野など、社会に出てからも役立つ能力が身につけられることも、後期課程進学を決めた大きな要因になっています。今後はこれまでの研究成果を論文にまとめるとともに、低コストでCO2吸収能が高いガス吸収液の開発に取り組んでいきたいと考えています。

 

―最後に後輩たちにメッセージをお願いします。

 大学院に進むことは目的ではなく、何かを実行、あるいは達成するための手段の一つとして、大学院進学があるのだと考えてください。目的もなく過ごすのでは意味がありません。ただ、大学院で学ぶことにより、目的以外にも多くのものが得られるメリットがあります。学会で同世代の学生から刺激を受けたり、他大学の教員や企業の研究者から研究に対する意見をいただけるなど、そうした交流から生まれるつながりも大きな財産になります。自分自身を大いに成長させられるように進路を選択し、粘り強く頑張ってください。

 

―ありがとうございました。今後のますます活躍されることを期待しています。

 

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