被災地の復興支援技術として貢献できる
洗浄水自浄型トイレシステムが高く評価される

 この度、「第9回廃棄物資源循環学会東北支部・第4回日本水環境学会東北支部合同研究発表会」において、土木工学科4年の宮田芳徳さんが最優秀発表賞を受賞しました。本会では24件の口頭発表があり、宮田さんの発表は大学生部門の最優秀発表賞に選ばれました。宮田さんが発表した「洗浄水自浄型トイレシステムのモニタリング調査」は、実際に福島県飯館村に設置した試作機を用いて、浄化機能の調査分析を行ったもので、実用化に向けて大きな期待が寄せられている研究です。
 宮田さんに受賞の喜びと研究内容について詳しくお話を聞きました。

 

―最優秀発表賞おめでとうございます。感想をお聞かせください。

 ありがとうございます。賞をいただいたのは初めてのことだったので大変驚きました。他にもたくさんの素晴らしい発表があった中で受賞できたことを大変光栄に思います。ご指導いただいた環境生態工学研究室の中野和典先生(写真左)、日々ともに切磋琢磨してきた仲間のおかげだと感謝しています。私としては最後の研究活動になりましたが、後を引き継ぐ後輩に良い形でバトンを渡すことができたので、これからさらに頑張って成果をあげてほしいと思います。

 

―受賞された研究の内容について詳しく説明いただけますか。

 日本の下水処理場や浄化槽で導入されている活性汚泥法という処理法は、微生物が生きていくために必要な汚水の流入が途絶えたり不安定化すると維持できないため、福島第一原発事故により避難指示区域となった場所などの使用頻度の低いトイレでは安定的に使うことができません。そのため、被災地でも使用可能な汚水処理システムの開発が必要になってきます。また、電気や水道等のライフラインが寸断されてしまう災害時は、トイレの水が流せないことや仮設されるトイレが汲み取り式であるため、快適なトイレとは言えない状況になります。汚水をその場で浄化し、洗浄水として再利用できるようなトイレがあれば、被災地の復興支援技術として貢献できるものと考えます。そこで本研究室では、4段のコンテナにろ材を充填させ、汚水を4段階でろ過処理する仕組みを用い、トイレの洗浄排水を直ちに浄化して洗浄水として再利用する洗浄水自浄型トイレシステムを開発しました。その試作第一号機を2016年6月に避難指示区域である福島県飯館村の農家の庭に設置し、現地の方に使用してもらいました。本研究では、トイレシステムの水質浄化性能と臭気をモニタリングして、その性能と快適性を確認するとともに、改善すべき課題の抽出を試みました。
 本システムは、トイレの汚水を直ちに浄化して洗浄水として再利用する完全閉鎖システムになっていることが大きな特長です。洗浄水一次タンクに約200Lを貯水し、1回あたりの洗浄水量は使い回しできるので、家庭のトイレより多い12Lとしました。実際にトイレの使用状況を記録してもらいましたが、平均すると使用頻度は3~4日に1回程度でした。再利用され続けている洗浄水の水質を評価するため、月1回、洗浄水一次タンクから採水を行い、SS(浮遊物質量)、BOD(生物化学的酸素要求量)、CODcr(ニクロム酸カリウムによる酸素要求量)、T-N(全窒素)、pH(水素イオン濃度)、T-P(全リン)、大腸菌群数を測定し、水質の分析評価を行いました。
 結果、すべての項目で一律排水基準と浄化槽基準を満たしており、河川の水質基準に当てはめるとB類型に相当し、水道3級に該当しました。大腸菌群数は一律排水基準を満たしてはいたものの、再生水の基準の一つである修景用再生水利用基準は満たせなかったことが課題として残りました。殺菌効果の高い銀などを4段目のろ材に変えるなどの対策を検討しています。
 また、トイレの快適性は臭気によって左右されると考え、本調査では快適性の評価にニオイセンサによる臭気測定を用いました。洗浄排水原水が流入する1段目の臭気が最も高く、その臭気レベル値は平均値で15でしたが、最終処理段である4段目の臭気レベル値は平均で4でした。一般家庭のトイレの臭気レベル値は50程度であることから、本システムの臭気は極めて弱く、従来の仮設トイレでは不可能であった快適なトイレが実現できたと言えます。

 

―どのような点が評価されたと思われますか。

 まず、水を外部に出さない完全閉鎖型トイレの構造に興味を持っていただけたことも要因の一つですが、被災地の復興支援技術だからこそ高く評価されたのだと思います。水質浄化機能も高く臭気もほとんどない快適なトイレであることは、ストレスの軽減につながります。私も最初は本当に水が浄化されるのか疑問視していましたが、実際に分析を行ってみると基準値を満たすほど水がきれいになっていて感動しました。圧倒的に少ないエネルギーで処理できる点も大きなメリットです。質疑応答では、大腸菌群数を減らすためのろ材についてアドバイスをいただきましたが、本発表を通して、実用化への期待の大きさも感じました。

 

―どんなところが研究の魅力ですか。

 研究は疑問なことばかりですが、突き詰めていくと答えがわかる楽しさがあります。一つ疑問が解決すると、また違う疑問や課題が出てきますが、それがまた研究の面白いところでもあります。土木は暮らしを支える土台であり、特に水は人間が生きていくために必要不可欠なものです。実家が下水道などの水回りの仕事に携わっていたので、私も下水道には興味があり多少の知識も持っていましたが、本研究のトイレは全く新しいシステムでした。自分で分析していても衝撃的で、素晴らしい研究だと思いました。

 

―今後の目標についてお聞かせください。

 人々の役に立てるよう、社会の一歯車として尽力していきたいと思います。さらにこの研究を活かして、社会に貢献できたらと考えています。

 

―後輩たちにメッセージをお願いします。

 研究していくうえで不安なことや疑問に感じることも多々あるかと思いますが、この研究室なら中野先生が進むべき道を示してくださるので、乗り越えられると思います。自分を信じて頑張ってください。

 

―ありがとうございました。卒業後も活躍されますことを祈念しております。

 

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