暮らしを支える構造物を守るドクター

高齢者の視点に立ち、理想の環境を検討する

工学だから実現できる「自然と共生する未来」

エンジニアが支える医療の未来

湖沼・河川の水を調査し、環境保全の情報を発信する

宇宙からの視点で地球の変化を読み解く

土木工学科 コンクリート工学研究室 岩城一郎教授

 土木の研究対象の一つは「私たちの暮らしを支える社会基盤」(インフラ)である橋やトンネルなどの構造物です。それらは耐用年数が長く、丈夫で壊れにくいと思われているのですが、実は最近、高度成長期に作られた構造物の老朽化が一斉に進んでいます。今ある構造物の寿命を延ばし、これから造るものの耐久性を高めることが、時代の課題となっているのです。

 われわれの研究は構造物を診るドクターにたとえられます。たとえば劣化した橋の状態を調べ(診察)、その原因を探り、必要な対策を提言します(診断)。また、作り替えが困難な都市内高速道路には、夜間や狭いスペースでも補強が可能な新工法を開発します(ギブス)。著しい劣化により架け替えを余儀なくされた橋はその一部を持ち帰って解剖し、原因を究明します(病理解剖)。実直に構造物(患者)と向き合う、その先にあるものは健全で持続可能な社会。「ロハスなインフラが、ロハスな人間社会を守る」と考えています。

建築学科 建築設計計画研究室 松井壽則准教授

 ユニバーサルデザインをはじめとした「人に優しい建築環境」に求められるのは「子どもからお年寄りまで、誰もが楽に気持ちよく使える」ということです。研究室の学生たちは最初、ギブスやゴーグルなどの通称「お年寄りセット」を装着して、不自由な動きを体感することから理解を始めます。さらにその状態で新旧の校舎が混在するキャンパス内を歩き、問題点を発見していきます。

 また私は学生たちを出来るだけ学外に連れ出すようにしています。たとえば路上の看板を頼りに、駅から目的地まで何分でたどり着けるかといった実験です。ある学生は介護士に混じって、高齢者も生活できる住宅改修計画に参加し、「経済的負担を最小限にして最大の効果をあげるには?」という検討を重ねました。 卒業生の多くは建築関係の会社に就職します。どの仕事に就いても、社会的弱者の視点から物事を見ることは大切ですし、世の中から必要とされることだと思います。

機械工学科 創成学研究室 加藤康司教授

 ここ百年ほどの間に大量の化石燃料等のエネルギー資源を消費した人類は、回復困難な傷を地球に刻みました。石油はあと40年で枯渇すると言われ、早急な対応が求められています。そんな時代にあって私の研究室では、工学部の立場から、有限な資源から自立し、自然と共生する暮らしを可能にする方法を探究しています。

 たとえば学内に建つ「ロハスの家」は、人が実際に居住して検証するエネルギー自立の実験装置です。環境負荷が少なく断熱効果の高い建材を使い、太陽光などを活用して給電せずに冷暖房をコントロールします。今後さらに、雨水を再利用したバス・トイレや、ゴミを無駄にしないキッチンシステムの構築等も進める予定です。

 こうしたロハス・エンジニアリングは、健康で持続可能な人の暮らしを実現し、未来へ橋渡しするための技術開発です。このテーマの研究に真剣に取り組む学生の若き探究心もまた、資源の一つと言えるでしょう。

『ロハスの家』研究プロジェクト≫

電気電子工学科 医療工学研究室 尾股定夫教授

 オープンキャンパスなどで本学部を訪れた高校生が「次世代工学技術研究センター」内の病院施設を見て、「これも電気電子工学?」と驚く姿をよく見かけます。病院といっても患者はゼロ。最先端の病院機器を揃えて最先端の医療機器を開発する国内唯一の施設です。現在の研究室の学生たちも、以前にそのような意外な感覚を味わった人が多いようです。

 たとえば、超音波による乳ガンチェッカー、異常分娩の事前診断、過疎地の病人を画面で診察する遠隔医療、等々。いずれも時代が求める先端医療工学の技術です。このように医療の未来は、工学なくしては語ることができません。

 大学院生の場合、海外の学会に出席する機会があり、そこで改めて自分の研究のレベルと技術者としての立ち位置を知り、強い使命感を持つようです。工学というフィールドで、病気を発見したり、難病を治療するための技術を開発できる若い力に期待しています。

生命応用化学科 環境分析化学研究室 平山和雄教授

 私の研究室では10年ほど前から、猪苗代湖と周辺河川の水を調査し、カドミウムや鉛、ヒ素などの有害元素の測定・解析をしています。産業廃棄物の処理がきちんと行われていない場合、汚染された土壌から河川を経て湖に有害成分が入り、環境汚染が進みます。数字の小さな変化から汚染源を突き止めて情報発信し、その拡大を食い止めるのが目的ですが、このような継続的な微量分析は、大学でなくては出来ない研究活動といえます。しかしそうした数値の動向から、いつでも鮮やかに答えが導き出せるわけではありません。後輩が先輩の成果を引き継ぎつつ、新しい工夫や考察を加えて、データという財産を蓄積していく地道な活動なのです。一方で学生一人ひとりは、失敗を経験することで研究者として成長していきます。冬になる頃には分析技術も熟練し、活発な意見交換ができるようになります。その頃が、研究室が一番熱くなる季節でもあるのです。

情報工学科 環境情報解析研究室 若林裕之教授

 われわれのパートナーは、地上からはるか600~900キロメートル上空の人工衛星です。そこから送られている画像データを使用することによって、地球環境の変化を把握する研究を行っています。たとえば、宇宙から観測することによって、南極氷河の流速変化やオホーツク海の海氷の面積や厚さの変化を、広範囲に知ることができます。また、この20年間で猪苗代湖の水質が大きく変化していることに注目し、土木工学科の先生と共同で人工衛星から水質変化を調べる研究を進めています。猪苗代湖上の観測ポイント毎に土木は水質に関するデータを、私たちは湖面の水色を調査し、人工衛星から観測した水色のデータと水質データとを結びつけるのです。

 情報工学というと、ずっとコンピュータの前にいるイメージかもしれませんが、私たちの研究室は、現地観測が多く、冬には寒い場所にも行かなければならないため、学生たちは先入観とのギャップに新鮮さを感じています。人工衛星のデータ解析は、観測技術の向上とともに今後の可能性が広がりつつある分野であり、大学生でも1年間でかなりの成果が得られます。

 
ロハスの家プロジェクト