1回教養講座は「宇宙」がテーマ

95%が未知の世界を科学の力で謎解く

 工学部では、毎年さまざまな業界で活躍する著名人をお招きして、その人生観や世界観などに触れる教養講座を開催しています。幅広い教養を修得し社会人としての力を身につけるために行われる「新入生フレッシュマンセミナー」の一環として行われ、一般の方々にも公開しています。平成26年度は「造」をテーマに下記の方々による講演を行いました。

1回:早稲田大学理工学術院物理学科教授 前田恵一 氏「宇宙:その95%の未知―ビッグバン宇宙論からダークエネルギーまで―」

2回:輪島功一スポーツジム会長 輪島功一 氏「頑張りの人生」

3回:㈱幸楽苑代表取締役社長 新井田傳 氏「人生成功20年論」

4回:スポーツコメンテーター 小谷実可子  氏「私のシンクロ人生」~未来に残したい大切なもの~」

教養講座2014image002ここでは、515()に行われた前田恵一氏による第1回教養講座を紹介します。前田氏は京都大学理学部を卒業後、イタリア・トリエステ理論物理研究所研究員、東京大学理学部助手などを経て、1989年より現職に就かれています。2006年にはケンブリッジ大学トリニティ・カレッジ客員教授に就任。出版された著書には「アインシュタインの時間」や「重力理論講義」などがあります。

 近年の宇宙観測により、膨張宇宙論はゆるぎのないものとなりましたが、同時に新しい謎も現れました。本講演では、宇宙の標準モデルであるビッグバン膨張宇宙論、および宇宙の95%を占めるダークマターやダークエネルギーと呼ばれる未知の「物質」といった新しい宇宙のミステリーについて解説いただきました。

 

宇宙とはどのようなものなのか

教養講座2014image004 まず、前田氏は宇宙の成り立ちに触れられました。光が1年間に進む距離を1光年として、天文学でよく使われる距離の単位1パーセクの値は3.26光年。宇宙の大きさはその30億倍の3000メガパーセク程度と推測されています。前田氏は宇宙のイメージを掴めるようにと国立天文台のmitakaというソフトを使って説明されました。太陽系そして 私たちの棲む地球がある銀河系、さらにその外には大小のマゼラン星雲、そしてアンドロメダ銀河があり、さらに遠くにはさまざまな銀河が集まって銀河団を形成。遙か彼方まで観測が進んでいるものの、まだ宇宙のほんの一部しか観測されていないことを示唆しながら、いよいよ本題へと入っていきました。

宇宙はどのようなものなのか―。前田氏は、知られている物理学の法則から導き出されていく宇宙の姿について解説していきました。「宇宙全体を考える場合は時間と空間がどうなっているのか、全体の時空の構造とそこに含まれる物質の進化を考えなければならない」と言及。かの教養講座2014image006有名な物理学者アルベルト・アインシュタインは、宇宙は有限で、未来永劫変化しないと考えました。しかし自分自身が提唱した一般相対性理論は、そのような宇宙は存在できないという答えを導き出したのです。困ったアインシュタインは修正して宇宙項というものを付け加えます。その後アレクサンドル・フリードマンは、時間的に変化する宇宙は一般相対性理 論と矛盾しないことを示し、宇宙は時間とともに膨張(または収縮)する宇宙モデルを提唱しました。1929年にはハッブルによって観測的に宇宙の膨張が確認されます。ハップルは、より遠くにある銀河がより速い速度で遠ざかるということを観測したのです。

こうした宇宙の中で物質がどう変化するのかを考え、ビッグバン・シナリオを作ったのがジョージ・ガモフです。宇宙初期の軽元素の存在・宇宙背景輻射・宇宙膨張が観測されたことからビッグバン宇宙論はおとぎ話でないことが明らかになっています。中でも前田氏は、宇宙背景輻射と宇宙膨張について、どのように観測されたのか詳しく説明を加えました。そして「頭の中で考え出されたビッグバン宇宙論は、3つの観測的証拠が見つかったことから、科学になり得たということを示している」とし、ビッグバン宇宙論は現代科学の金字塔であると言明しました。

 

宇宙の新たな鍵を握る未知の物質とは!?

しかし、もちろん全てが分かったわけではなく、新しい精密観測により新しいミステリーが出てきたと前田氏は言います。

ひとつはダークマター。見ることのできない暗黒物質ダークマターは、重力源であることはわ教養講座2014image008かっています。もうひとつはダークエネルギー。観測結果から現在の宇宙が加速膨張していることがわかり、それを引き起こしているのがダークエネルギーだというのです。

宇宙に含まれる物質の成分は、原子などの既知の物質はわずか5%で、ダークマター27%、ダークエネルギー68%という未知の物質が95%を占めているわけです。「ダークマターは、可能性としては我々が知らない素粒子もしくはミニブラックホールかもしれません。しかしダークエネルギーは、物質かどうかもわからない」としながらも、「20世紀初頭まであると信じられていたエーテルはアインシュタインの新しい法則(特殊相対性理論)により否定されました。ダークエネルギーは現在のエーテルかもしれない」と示唆しました。ダークエネルギーは、現代宇宙論の最大の謎とされています。

前田氏は、「捉われている常識を破れば今の謎は解ける。新しいことを解明することで、新しい自然法則が見つかるかもしれない」述べられました。この言葉は、これから大学で学んでいく教養講座2014image0101年生にとって、ひとつの指針となったようです。そして最後に「宇宙論はますます面白くなるので皆さんも注目してください」と笑顔で講演を締めくくりました。

1年生からは、「ダークマターはヒックス粒子と関係があるのですか」「我々の物理の法則でどこまで理解できるのですか」「ビッグバンとインフレーションの違いは」などの疑問質問も飛び出しました。果てしない宇宙への関心もまた尽きないといったところです。 

 

【教養講座の感想】

教養講座2014image012情報工学科1

宇宙のことに興味があり、コンピュータの力を使って解明できたらいいなと思います。観測は大事。遠い宇宙の彼方まで飛ばせる高性能な観測機があればいいと思います。高校でも情報分野を学んでいたので、大学でもっと勉強したいと思い、工学部に入りました。情報工学の力を使って人の役に立ちたいと思っています。

 

教養講座2014image014建築学科1

内容は難しかったですが、少し宇宙論に興味を持てました。今まで知らなかったダークマターという言葉も知ることができました。これからも教養講座でいろいろな方の話を聞いて、知らなかった分野にも興味を持ち視野を広げたいと思います。

 

 

 

 1年生の皆さんには、こうした教養講座などの貴重な体験を通して、各学科の専門分野にとどまらず、幅広い知識を吸収してほしいと思います。