『建築材料屋からの一言』

教授 出村克宣

 最近,犬や猫などのペットを飼える「ペットマンション」が人気であると聞く。従来,  2003年4月,工学部はIS014001を取得しました。その際次のような環境方針を定めて います。

環境方針

1 本学部の大学運営に関連する諸活動において,省資源,省エネルギーの推進,及び   廃棄物の削減と適正管理を実施するとともに環境マネジメントシステムを継続的に   改善し,環境汚染の予防に努める。 2 本学部キャンパスにおいて循環型リサイクルシステムを確立する。 3 工学部として環境保全にかかわる研究開発及び支援活動を積極的に展開する。 4 本学部キャンパス内のすべての活動にかかわる,環境関連法規,及びその他の要求   事項を遵守する。 5 この環境方針を達成するため,環境目的及び目標を設定し,定期的な見直しを行う。  工学部が,このような環境方針を定めていることをご存じでしょうか。私も,建築材 料開発の中で,何か新い取組みができないものかと考えてみました。これまで,ポーラ スコンクリートブロックを用いた水質浄化やコケを使った屋上緑化などの研究・開発を 行っており,その成果を用いながら,取り組んだのが雨水の再資源化システムの開発で す。工学部の正門を入った西側の「心静緑感広場」にそのシステムがあります。なお, この取組みは,工学部の環境推進委員会との共同で行ったものです。まず,その概要を 紹介したいと思います。  さて,雨水は,地球上の水,特に海洋水の蒸発によって発生した水資源がその起源で あり,空気中の汚染物質を搬送するものですが,雨の降り始めを除けば,きれいな蒸留 水と考えることができるのではないでしょうか。そこで,雨水をきれいなままで捕集し て,長期間その水質を維持しながら貯めておくことを目的としました。これまでも,雨 水を中水として利用する概念があり,最近では,トイレ用水,散水用水などに雨水を利 用するための機器やシステムが開発されていますが,そのような施設において,雨水の 水質を維持しながら長期間にわたって貯留する概念はあまり考慮されていないのが現状 です。開発したシステムは,次のような施設で構成されています。 @原水槽:周辺施設で集水した雨水を一次貯留し,沈殿処理する地下水槽。A貯留水槽: 水質浄化用ポーラスコンクリートブロック及び機能性接触材をその底部に敷き込んだ地 下水槽。なお,その上部には,天然ろ過材を敷詰めたろ過層を有し,ろ過層上部には芝 生を植裁している。B水循環システム,C電源及び制御施設,D自動情報配信システム  雨水は,原水槽で一次処理された後,貯留水槽上部のろ過層内に散水され,生物浄化 されます。ろ過層には,芝生の根が成長しており,窒素やリンなどの除去機能を有して います。貯留水槽内の雨水は,常時汲み上げられ,ろ過層内を循環することによって浄 化され,貯留水槽上部より散水されます。貯留水槽内部の水は,水質浄化用ポーラスコ ンクリートブロック及び機能性接触材層を通過することによって,生物浄化されます。 また,貯留水槽上部の芝生は,降雨のろ過機能を有すると共に,貯留槽内の雨水を散水 することによって,それに含まれる栄養塩類を除去する機能を有しています。なお,雨 水の再資源化システムは,各種施設における中水供給施設及び非常災害時用水貯留施設 として使用でき,芝の上では,運動も可能であることから,公園や校庭の整備にも利用 できます。  建築材料分野の研究室の取組みとして,どのように評価されるか若干疑問ですが,材 料単体にこだわることなく,建築に何らかの形で関わりをもてればよいのではないかと 考えています。建築って,そんな学問分野ではないでしょうか。建築設計をするとき, 計画デザイン,構造,材料,施工など様々な観点からの情報を必要とします。そのため, 建築学は総合学といわれます。建築学科で学ぶ諸君にとって,このような観点から授業 をみつめたことがありますか。建築士の試験でも,建築のすべての分野から出題があり ます。在学生の諸君には,何事にも興味をもって,広い視野で物事を見つめながら建築 を学んでほしいと思います。  最後に,卒業生の諸君には,建築学が奥深いことは,みなさんが一番よく知っている ことと思います。これからも,日々,研鐙をつんで,社会に大いに役立つ建築家・建築 技術者として活躍されることを祈念いたします。なお,みなさんを含めて,工学部建築 学科卒業生は1万1千人を超えました。そして,日本大学理工系学部の建築系卒業生で 組織する桜門建築会の会員数は,現在,6万余名に上ります。これから社会にでても, みなさんには,このような多くの同窓がいることを忘れないで下さい。 (主任教授)