今回の東日本大震災と東京電力福島第一原子力発電所事故は、我々技術者を養成する大学と、これから工学技術を学ぼうとする人々に多くの課題を投げかけました。例えば、自然と共生する災害に強い街、また、エネルギー消費を抑えても快適に生活できる空間はどのようにして実現できるのかなど、既成の工学領域だけでは解決困難な問題への解答が求められています。繰り返される自然災害での被害を最小限にすること、すなわち、減災には災害に対する考え方と技術革新が必要です。今回のような災害を踏まえ、工学部が主張する持続可能な社会形成と循環型再生エネルギーを活用した「ロハスの工学」の考え方は減災への技術革新の起爆剤になると考えております。
工学部のある福島県郡山市も大震災や原発事故で大きな被害を受けた地域です。しかし、幸いなことに、工学部の建物は震災前に耐震補強工事を完了していたこともあり、施設・設備に大きな被害はありませんでした。また、震災以降、建物内外の教育施設における空間放射線量を毎日モニタリングして、水質調査の結果も合わせて、ホームページ上で公開しています。それらの値は国が定めた基準値を大きく下回っております。学生食堂で提供している食材についても、放射能汚染のないことを逐一確認し、徹底した食の安全確保に努めています。
一方、通学や授業形態、サークル活動などの生活パターンの異なる学生の日常生活でうける積算放射線量の測定を継続しており、その平均値から算出した1年間の積算放射線量は健康に影響を及ぼさないとされる数値以下であることを確認しています。さらに、より安全で安心な教育環境を保つために、高圧水洗浄による建物壁面、舗装路面等の除染作業、側溝の汚泥除去作業、グラウンド、テニスコートなどの屋外施設を対象とした表土除去工事など、キャンパス内の除染を積極的に推進しています。
今後とも、安心して学生生活が送れるよう、教育環境の維持と安全確保に万全を期してまいります。
工学部長 出村克宣