クローズアップ工学部

建築学科の学生を対象に『じゅうたく小町』による建築現場セミナーが開催されました

住宅業界で活躍する先輩たちが語る!
施工管理の仕事のやりがいとは!?

 11月6日(金)、ハウスメーカー、専門工事業等約50社が参加する全国低層住宅労務安全協議会(以下低住協)主催による、『じゅうたく小町 建築現場セミナー “現場監督の仕事とは?”』がオンラインで開催されました。じゅうたく小町は関東地区で活躍するハウスメーカーおよび関係メーカーの女性現場技術者で構成されている低住協の活動部会の一つ。現場環境の改善に取り組みながら、小中学生に仕事を紹介する学校キャラバンなども実施し、広報活動を行っている団体です。本企画は、これから就職を考える学生たちに施工管理や現場監督の仕事について知ってもらうためのもので、昨年度は工学部62号館3階AV講義室にて実施されました。2回目となる今年度はコロナ禍の影響でリモートでの開催となりましたが、じゅうたく小町メンバーの中からハウスメーカーの施工管理者等あわせて11名の皆様にご参加いただきました。

 はじめに、じゅうたく小町副部会長の三幣涼子さん(積水ハウス株式会社)から、企画の主旨とセミナーの流れについてご説明いただきました。三幣さんは、「施工管理を選択肢の一つに加えていただければ」と切望されました。続いて実施にあたり尽力された建築学科市岡綾子専任講師よりご挨拶いただきました。市岡専任講師は、じゅうたく小町の方々にセミナー開催について感謝の言葉を述べられるとともに、「学生にとっては大変ありがたい機会であり、ぜひ有意義に活用してほしい」と伝えました。

 まずは、じゅうたく小町の皆様から自己紹介していただきました。今回は、積水ハウス株式会社、大和ハウス工業株式会社、大東建託株式会社、菊水化学工業株式会社のじゅうたく小町のメンバーと建材商社に勤める建築学科の卒業生といった、キャリア18年のベテランから3年目の若手社員まで幅広い年代の方々が参加。設計から現場に異動した方もいたり、経歴も様々。どんなお話が聞けるのか、期待感も高まる中、セミナーが始まりました。

 はじめに、施工管理とはどんな仕事なのか、一棟の住宅ができるまでの工程を追いながら、ハウスメーカーの各部署の業務内容、仕事の流れ、ハウスメーカーとゼネコンの施工管理の仕事の違い、施工管理の具体的な業務などを、わかりやすく説明していただきました。複数の現場を管理することになるため、全ての物件の流れを把握し、効率よく段取りしていくことが重要だと強調されました。

卒業生に聞く!施工管理を選んだ理由と実際の仕事とは!?

 次にパネルディスカッションが行われました。事前に学生たちから寄せられた質問に対して、じゅうたく小町の方々にお答えいただきました。『施工管理を選んだ理由は?』、『働いてみて施工管理のイメージは変わった?』という質問には、本学部建築学科を卒業された先輩方が答えてくれました。

 2018年3月に卒業した礒崎玄さん(写真左)は、設計志望で積水ハウス株式会社に入社。現場についても学びたいと思い、3年目となる今年8月、ジョブローテーション制度により施工管理の仕事に就きました。施工管理は図面の通りに工事が進んでいるかを監督するのが仕事だと思っていた礒崎さんは、実際物件を担当してみて、お客様とのやりとりや打合せといった対客の業務が多い仕事だと感じているそうです。大東建託株式会社に勤務する佐藤昇太さん(写真中央)は、2015年3月に卒業し、今年入社6年目。現場に一番関われる施工管理に魅力を感じ選んだと言います。入社前に仕事内容について理解はしていたものの、実際は大きな金額の物件を動かしたり、安全面では職人さんの命を預かるなど、思っていたより重大な責任のある仕事だと感じているそうです。その分、完成した時には大きな達成感が得られる仕事だと話していました。2011年3月に卒業し、大和ハウス工業株式会社に入社した根本希美さん(写真右)は、出産による育休を経て今年10年目を迎えました。施工管理を選んだ理由は、図面を書くのが苦手だったから。当時は施工管理の仕事をイメージできるような情報がなかったこともあり、実際に働いてみると大変責任のある仕事で、若いうちはプレッシャーを感じていたそうです。現在は自分のやり方やキャラクターが現場に定着してきたことで、自分の裁量で進められるようになったと言います。やはり礒崎さんと同様に、現場管理が5割、営業が5割の仕事だと話していました。他の方からは、「施工管理はマネジメント職であり女性でもできる仕事」、「お客様の一生に一度のお買い物に寄り添える素敵な仕事」というお話もありました。

やりがいがあるからモチベーションにも繋がっていく

 『仕事のモチベーションを保つ方法は?』という質問には、「辛いことがあっても自分の成長のためと思えば頑張ろうという気持ちになれる」、「自分が落ち込んだ時には周りの人が悩みを聞いてくれたり励ましてくれるので頑張れる」、「自分の気持ちを保つのは難しいので、オンオフを切り替えることも大切」などの回答がありました。また、施工管理は現場の職人さんやお客様以外にも近隣の方との出会いもあったり、多くの方々と関わりながら自分が成長できる仕事だと話していました。

 『やりがいや達成感を感じるのはどんな時?』という質問には、「自分を求めてくれる、頼ってくれる人がいるとやりがいを感じる」、「大変だった仕事でもお客様に喜んでいただけるとやりがいを感じ、今後もご満足いただける家をつくろうというモチベーションに繋がっている」、「苦労した現場ほど達成感がある」という回答がありました。大変なこともある中で、やっていてよかったと思えることの方が多い仕事だと言い、この仕事に就く人を増やしていきたいとも話していました。

 その後行われた個別相談では、学生が聞きたいことを直接じゅうたく小町の皆さんに質問しました。学生から出た質問は『会社を選んだ理由』、『オフの時は仕事のことは考えない方がよいか』、『学生のうちに勉強しておいた方がよいこと』など。一つの質問に対し、数名のメンバーから回答をいただきました。会社を選んだ理由は「内定が一番早く、縁を感じた」、「この会社の方々と一緒に働きたいと思った」、「住宅展示場でいろいろなハウスメーカーをみた中で、惹かれたのがこの会社だった」など様々でした。オンオフの切り替えは皆さん大事だとしつつ、休日に仕事の電話があった場合にも必ず対応しているようでした。学生のうちに勉強しておいた方がよいことは、「設計演習や計画の授業も後々大事になる」、「資格の勉強は大学時代にやった方がよい」という回答のほか、「学生のうちに遊んでおいた方がよい」というアドバイスもありました。

 こうして和やかな雰囲気の中、学生たちもいろいろ質問しながら、施工管理の仕事や建築業界について、貴重な情報を得ることができました。現場で働く方の生の声は、経験した方でなければ語れないリアルな話ばかりで、直接心に響く内容でした。画面を通しての交流でしたが、学生にとっては大変有意義な時間を過ごすことができたようです。ぜひ、将来の進路決定に役立ててほしいと思います。この場をお借りしまして、じゅうたく小町の皆様に感謝申し上げます。

参加者の感想
安藤輝さん(1年次生)

 いままで知らなかった施工管理や現場監督の仕事について知ることができました。ハウスメーカーはひとりで複数の物件現場を巡回しながら管理すること、工期は3~5か月ということなど、具体的なことに加え、実際に現場で働いている人の話を聞き、自分の視野が広がったように感じました。特に面白いと感じたのは、施工管理の仕事は意外と自由な仕事だということです。今まで私が抱いていた「きっちりかっちり」というイメージとは、少し違うものでした。セミナーで聞いた話を含め、自分の将来の仕事について考えていきたいと思いました。

森花音さん(2年次生)

 初めは現場監督についてあまり関心がありませんでしたが、自分の将来のためにと思い、セミナーに参加しました。セミナーでは、実際に現場監督として仕事をしている方々の仕事内容や、学生が気になる疑問点や不安に思っている事などを細かく説明して頂き、ためになりました。私が大変満足しているのは、グループディスカッションです。質問に対して凄く熱心に、そして気軽に答えてくださったので、安心かつ集中して話を聞くことができました。今後、またこのような機会がありましたら、是非参加したいと思っています。

齋藤惟さん(3年次生)

 複数物件を扱う施工管理の仕事の中で、現場の巡回以外にお客様との接待の割合が意外と多く、それに加えて各工事責任者を統括するマネジメント業務だと伺いました。完全に一人で責任を背負ってその業務をこなす訳でなく、周りの社員や関係業者で協力してお客様の高額な買い物に寄り添い、住宅を造り上げる構図に感動しました。住宅建築の施工現場で働くイメージが具体化でき、良い機会となりました。

市岡先生からのメッセージ

 今回は2度目の開催でしたがオンライン開催となり、じゅうたく小町の皆様におかれましては、開催に向けての準備が大変だったことと存じます。地方にある大学には情報が届きにくいこともある中、このように卒業生とのご縁で、現役学生が直接住宅建築の施工管理職に関する実態を知る機会に恵まれることに感謝いたします。自らの将来の可能性を広げるために、多くの有意義な情報を早期から入手し、将来像を具体的にイメージすることはキャリアデザインにおいて重要と考えますので、今後もこのような機会が続くことを願っております。今回の参加学生がこのセミナーで得た情報をもとに、自身の将来を迷いなく選択することを期待しています。最後に、じゅうたく小町の活動、そしてじゅうたく小町に参加されている皆様が、今後ますますご活躍されることを心より祈念しております。