設計から施工まで 建築の工程を学ぶ貴重な経験

 建築学科の建築歴史意匠研究室(速水清孝教授)では、教育の一環で、毎年、学生たちが共同で原寸大の作品を制作しています。今年は『焼杉』を使った茶室の制作に挑みました。『焼杉』とは、杉板の表面を焼き焦がし炭素層を人為的に形成させたもので、耐久性や防虫性など様々な効果があります。関西地方の民家で使われていた伝統技法で、主に外壁材に用いられていました。速水教授は以前、東京大学名誉教授の藤森照信氏とロンドンでの展覧会に、この手法を用いた茶室『ビートルズ・ハウス』を出展しています。そのことを知っていた学生が、自分たちもやってみたいと熱望したことにより、この企画が実現しました。「今回がそれと違うのは、フツウの人でもできる技術だけで造っていることです。建築の工程の全体像や建設の実際を学ぶことは、学生の将来の役に立つのでは」と語る速水教授。学生にとって、焼杉はもちろん、原寸大の建築を造ることは滅多にない経験です。速水教授自ら設計を担当。材料の調達をはじめ、施工は学生が担当しました。材料には、ホームセンターで購入可能なものから選んだため、杉ではなく、2×4工法に用いられるSPF材が使われました。9月10日(月)、いよいよ『焼杉』実施の日。長さ3.6mの板3枚を三角柱型の煙突状に組んで、垂直に立て、下から火を点けた新聞紙を入れると、煙突効果で上部から炎が上がり、木材はあっという間に焼けていきます。その時間約5分程度。板の表面が十分に焼けたら三角柱を寝かせ、水をかけて火を消せば焼杉の完成です。「思った以上の迫力でした!」と学生たちも初めての『焼杉』体験に興奮していました。

 実際に茶室を造るにあたり、設計上の不具合がないかを確認する意味で10分の1の模型を作製しました。薄い板で作るせいか、揺らめくような華奢な造り。テレビアニメ『サザエさん』のエンディングに出でくる『サザエさんハウス』のようなイメージです。「華奢過ぎて、建たないのではないか」との声も出る中、どんな茶室になるのか期待と不安を抱えつつ、制作に入りました。

 

茶室『ランタンハウス』完成!

 主な部分を全てユニット化し、組み立てていきます。壁は 焼杉板をつなぎあわせたユニットですが、ユニット化する前の板だけの状態では、立てようとすると大きく撓んだ板も、ユニット化して、それぞれをつなぎ合わせていくと、次第にしっかりとしていきます。出来上がってみると、華奢どころか、想像以上にがっしりと建ちました。制作に要したのは、焼杉の作業を含め7日。板の表面には無数に空けた小さな穴があり、そこから光が射し込みます。夜にはランタン(提灯)のようです。季節はちょうどハロウィン。ハロウィンでお馴染みの『ジャック・オ・ランタン』から、『ランタンハウス』と命名されました。

 この茶室は、10月27日(土)・28日(日)に開催された北桜祭でお披露目されました。漆黒の風貌をした奇妙な建物に来場者も興味津々。中に入ってみたいというお子さんもいて、幅広い年代から注目を集めていました。建築に詳しい方は、「家具の高さが絶妙。よく考えられている」と感心されていたようです。自分たちが手掛けた建築が評価され、学生たちも嬉しさを滲ませていました。

 「焼杉がどんなふうにできるのか知ることができてよかったです」、「原寸大のものづくりは大変でした」、「設計から施工まで、一貫して携われたので達成感がありました」と語る学生たち。小規模ながらも茶室の制作を通して、ものづくりのノウハウを学ぶことができ、学生たちにとっても有意義な体験となりました。きっと、社会に出てからも役立つ貴重な財産になったことでしょう。