住宅業界で活躍する先輩たちに聞く!
施工管理の仕事の魅力とは!?

 11月5日(火)、工学部62号館3階AV講義室にて、ハウスメーカー、専門工事業等約50社が参加する全国低層住宅労務安全協議会(以下低住協)主催による、『じゅうたく小町 建築現場セミナー “住宅の施工管理とは?”』が開催されました。じゅうたく小町は、関東地区で活躍するハウスメーカーの女性技術者を中心に構成されている低住協の活動部会の一つ。会社や業種の垣根を越えて建設現場の安全を追求するとともに、戸建て、集合住宅の建設現場に潜む特有の課題を抽出し、その解決や改善に取り組んでいます。女性ならではの悩みを共有し、情報交換できる場でもあります。また、小中学生を対象にしたお仕事紹介イベントなども行っています。今回、初の試みとして、大学生を対象に入職促進を図るイベントを企画。建築学科の卒業生で、現在スウェーデンハウス株式会社に勤務する壁下瑛里子さんが、在学中に所属していた住環境計画研究室の市岡綾子先生に相談したことから、工学部の学生を対象にした本企画が実現しました。じゅうたく小町は女性技術者の団体ですが、今回は大和ハウス工業株式会社に勤務する同級生の和田幸也さんと後輩の鈴木啓恭さん等、男性技術者も応援に駆けつけて、学生たちに施工管理の仕事の魅力を教えてくれました。

 セミナーに先立ち、壁下さんがご挨拶されました。「学生の皆さんに施工管理の仕事について知っていただく機会をつくりたいと考えて企画しました。これから仕事を選ぶ上で、役立つ情報を提供できればと思います」。じゅうたく小町はハウスメーカー以外にも建材メーカーや塗料メーカーも参加する団体で、今回のメンバーは、積水ハウス株式会社から女性2名と男性1名、大和ハウス工業株式会社から前述の卒業生2名、スウェーデンハウス株式会社から壁下さんと女性2名の他、塗料メーカー菊水化学工業株式会社から女性1名の計9名が参加。一人ひとり自己紹介もしていただきました。設計希望で入社後施工管理に携わっている方や、まだ入社1年目の若手社員から10年以上のベテラン現場監督まで、様々な経歴の方々にお集まりいただきました。

 次に施工管理とはどんな仕事なのか、一棟の住宅ができるまでの工程を追いながら、わかりやすく説明していただきました。ハウスメーカーの各部署の業務内容、仕事の進め方、またハウスメーカーとゼネコンの施工管理の仕事の違いにも触れられました。施工期間や発注先が違う点や、ゼネコンは1つの現場に事務所を置き、複数人のチームで常駐管理しているのに対し、ハウスメーカーは一人の担当者が複数物件を担当し、巡回管理しているところが大きな違いです。次に施工管理の具体的な業務である安全管理・品質管理・工程管理・予算管理について詳しく説明されました。たくさんの図面を見て、たくさんの部材を確認し、たくさんの職人と協力して、しっかり検査・スケジュール管理し工事を進めていき、最終的にお客様と設計した住宅を形にするのがじゅうたく小町の仕事。お客様の夢を形にする仕事だという話を聞き、学生たちも目を輝かせながら真剣にメモを取っていました。

 

施工管理の大変さややりがい、失敗談まで、本音で語るパネルディスカッション

 続いて、ハウスメーカー施工管理者によるパネルディスカッションが行われました。5名のベテランが登壇し、施工管理の仕事の裏側まで本音で語ってくださいました。

施工管理の仕事を選んだ理由は? 実際働いてみて施工管理のイメージは変わった?

 1年目の若手社員たちの選んだ理由は、「元々ものづくりが好きだったから」「設計志望で就活を進めていたが、施工管理はお客様の身近で家を建てる仕事に関われると知ったから」。「施工管理は現場作業だけかと思っていたが、意外に事務作業が多い」 「思った以上にお客様とのやり取りが多い仕事」というイメージを持たれたようです。ジョブローテーション制度により施工管理に就いた5年目の男性社員は、「実際にやってみて現場の職人さんやお客様など、人との関わりが多い仕事だという印象を持った」と話していました。設計志望で就活を進めていくうちに、施工管理にシフトした鈴木さんは、「全般的にものづくりに携われれば良かった」という理由で選んだそうで、「実際に現場で働いてみると、職人さんに教えてもらうことが多くて、思った以上にいい環境」だと話されました。和田さんが施工管理を選んだ理由は、「体動かすことが好きだし、設計より人とコミュニケーションする方が自分に合っているから」と言い、「現場はまさに生き物。毎日違う工程で日々の安全管理も変わるし、そんな現場を管理していくのが面白い」と仕事の魅力についても言及されました。壁下さんは、「たまたま友人と一緒に今の会社の説明会にいった時、展示場で見た家がどうやって造られるのか知りたくて、施工管理を選んだ」と話されました。また、「臨機応変に対応しなくてはいけない仕事で大変だけど、やりがいを感じている」と仕事への思いも話してくれました。ベテランの女性社員の方は、「入社当時は女性の技術者がほとんどいない中で施工管理に就いたが、女性もできることを示したかった。もともと設計志望で2回ほど経験したが、職人さんに“現場に向いている”と言われたこともあり、今は施工管理に就いている」と話されました。次の「やりがいや達成感を感じるのはどんな時?」という質問には、「図面チェックの時に現場にしかわからない点を指摘して工事前に是正できた時」 「引き渡し後も施主の方への対応をしていく中で、親密な関係を築けた時」 「2次元の図面を完璧に3次元に収めることができた時」と答えられ、様々な場面で充足感を得られているようでした。

大変だったことはどんなこと? どうやって解決しましたか?

 パネラーの皆さんに、具体的なエピソードとその解決策について語っていただきました。鈴木さんは新人の頃の経験から、「とにかく職人さんが恐かった。1年目だから素直に聞いて頑張るしかなかった」と現場の大変さを話され、「でも職人さんは筋が通っている。頑張った過程もちゃんと見てくれている。職人さんとも信頼を築けるように細かい対応が必要」と強調されました。一番大変なのは安全管理だと言う和田さんは、「建設現場では災害の回避、熱中症、怪我をしないようにすることが大事。そのための予防策を考え取り組むことで危険のリスクを軽減している」と話されました。その他、ミスをしたり要望通りできず、お客様から御叱りを受けた時が大変だったという声もありました。時間を掛けて説明し親身な対応を続けることで、信頼を取り戻したそうです。また、 「報連相が大事」「いろいろな人に相談して知恵をいただいて解決できた」という話もあり、一人で抱え込まず、いろいろな人との関わりの中で解決策を見出すことも大事だと示唆されました。

仕事をしてどんな力が身についたか

 最後の質問に対し、パネラーの皆さんは、「人と話すのが苦手だったが、人と関わる中で人の懐に入り込む力が身についた」 「人への依頼の仕方、人を動かす力が身についた」 「人間関係、信頼関係を構築する力が備わった」 「コミュニケーション能力はもちろん、経験値の中で、自分で判断する能力やリカバリー能力が身についた」 「駆け引き、説明が上手くなった。この仕事は人生力を養える」というようなことを挙げられました。皆さんのお話から、施工管理の仕事で重要なのは人との関わりであり、現場で人間関係を構築できれば、仕事を円滑に進めることができるということが分かりました。

 パネルディスカッション終了後、企画実施にご尽力された市岡先生が、じゅうたく小町の皆さんにお礼の言葉を述べられました。また、個別に座談会を実施していただけることにも感謝され、学生たちには、「せっかくの機会ですので、時間を有効に使ってください。自分一人で悩まずに、いろいろ聞いてみることもコミュケーションの一つ。工学部の卒業生以外の方にもお越しいただいているので、ぜひご縁をつくってください」と伝えました。学生たちは自分の思い描いているビジョンに近い方や、お話を聞いて興味を持った方に直接質問したり、いろいろなアドバイスをいただいていました。

●3年女子学生の声  社員の方と1対1で話す機会はなかなかないので、このような機会があって良かったです。第一志望の会社の話を聞くことができました。施工管理のことはよくわかっていませんでしたが、お話を聞いて思っていたより楽しそうだなと思いました。入社後は、営業や設計など仕事が広がるのもいいですね。

●3年男子学生の声 ハウスメーカーの施工管理を志望しているので、今日の話は自分にとって全て有意義で意味がありました。“災害ゼロ”、“失敗ゼロ”が大事だということも分かりました。座談会では直接就活の体験談も聞けたので良かったです。今度インターンシップを受けるので、活かしていきたいです。

●4年男子学生の声  設計を志望して就活を進めていたので、施工管理の仕事について知る機会がなかったから、詳しく話を聞いて興味を持つことができました。大変だけど、それ以上にやりがいがありそうだし、楽しく仕事されているのが雰囲気からも伝わってきました。自分もやってみたいと思いました。“現場は生き物”、“臨機応変さが必要”という言葉が印象に残りました。

2年女子学生の声  お話を聞いて、今まで抱いていた施工管理のイメージとは違っていました。建物を造る仕事だけど、一番大事なのは人であり、仕事を進めるうえでも人とのコミュニケーションが大切だということが分かり、良いイメージに変わりました。女性も施工管理で数多く活躍しているようなので、抵抗感も無くなりました。

 じゅうたく小町の皆さんには、学生一人ひとりの質問や悩みに親身に応えていただきました。参加した建築学科の学生たちにとって、大変有意義な時間になりました。大変お忙しい中、このような貴重な時間をつくっていただき、ありがとうございました。この場をお借りして、深く感謝申し上げます。

 最後に卒業生3人からのメッセージをお伝えします。

壁下 瑛里子さん スウェーデンハウス株式会社(建築学科2008年度卒業)

 学生の時は、住環境計画研究室で小中学校を対象にした調査・研究に携わっていました。当時は構造・材料・現場に興味がなく、設計士や施工管理にもなりたいとは思っていませんでしたが、会社説明会に行ったことがご縁となり、この会社で施工管理の仕事がしたいと思い就職しました。施工管理の仕事の魅力は、お客様の笑顔が見られること。日々気持ちよく住んでいただいている様子を見ると、要望に応えられて良かったなと思います。家を建てて終わりではなく、アフターフォローもしていきながら、長いスパンでお客様とお付き合いしていけるのが、ハウスメーカーの面白さでもあります。就活では、早く内定がほしいからと焦ったり、親や先生など周りの意見に流されないよう、自分が何をやりたいかを明確にして、希望の道に進んでほしいと思います。

和田 幸也さん 大和ハウス工業株式会社(建築学科2008年度卒業)

 この業界には日大の卒業生が数多くいることが大きなメリットです。在学中から仲間とのつながりを持っておくと良いでしょう。社会に出てからきっと役に立つと思います。また、アルバイトでも何でもよいので、外部や地域の人たちとの接点を持ってほしいと思います。施工管理の仕事では、20代から60代まで幅広い年代の方たちと仕事をします。「あの人の現場だから頑張ろう」と思ってもらえるようにするためには、上手くコミュニケーションをとっていくことが大事です。お客様に対しても同じです。集合住宅などの工事依頼主に、「またよろしく頼むよ」と言われると、やりがいを感じます。 私自身、人に愛される人間でありたいと思っています。皆さんも現場で信頼関係を築き、期待に応えられるような施工管理者を目指して頑張ってください。

鈴木 啓恭さん 大和ハウス工業株式会社(2014年度卒業)

 私は在学中、意匠がやりたくて浦部智義先生の建築計画研究室に所属していました。福島県山間地域の古殿町に舞台をつくったり、ロハス的な研究をしていました。その頃からチームで仕事をすることを学んでいましたが、今考えると、なかなか経験できないことだったと思います。大学は、社会に出るための心構えを養う期間でもあります。現場の仕事に必要なのは根性。学生のうちに鍛えておくことが必要です。今は企業も積極的に発信をしているので、情報は得やすいと思います。しっかり考えた上での失敗と考えずに失敗したのとでは、結果が全然違ってくるので、視野を広げていろいろな情報を知るようにしてほしいですね。