浅部地中熱利用システムの研究が

国の大型プロジェクトに決定!!

NEDOimage002この度、NEDO(独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)の「再生可能エネルギー熱利用技術開発」事業に、本学部の「一般住宅向け浅部地中熱利用システムの低価格化・高効率化の研究」が採択されました。エネルギーの多様化が求められる中、NEDOは我が国の新たなエネルギー開発の先導役として1980年に誕生した独立行政法人です。太陽光発電や風力発電、バイオマス利用技術、省エネルギー技術、燃料電池、各種リサイクル技術、地球温暖化対策技術などの開発・普及を目指し、産学連携のプロジェクトを推し進めています。

採択された本事業では、地中熱、太陽熱、雪氷熱など再生可能エネルギー熱利用の技術開発でコストダウンを実現することで普及拡大に貢献することを目的としており、本学部は地中熱利用の分野での採択となりました。

 本プロジェクトは地元郡山市の有限会社住環境設計室と日商テクノ株式会社との共同研究ですが、本学部が研究代表として携わるプロジェクトとしてNEDOの事業に採択されるのは初めてのことです。研究代表者である工学研究所次長の柿崎隆夫教授に採択されたプロジェクトの詳細についてお話を伺うとともに、研究への意気込みを語っていただきました。

 

―この度はNEDO事業への採択、おめでとうございます。まず、採択された事業の内容について、ご紹介いただけますか。

NEDOimage003東京電力福島第一原子力発電所事故以来、ますます再生可能エネルギーに対する期待が高まる中、NEDOでは地中熱・太陽熱・雪氷熱等の再生可能エネルギー熱の利用を重要視し、技術開発に力を注いでいます。しかしながら、なかなか普及していないのが現状です。その要因として挙げられるのが、導入コストや運用コストの高さです。この事業では、再生可能エネルギー導入コストと運用コストを20%低減させるというコストダウンを最大の目的としています。そこが大きな特徴と言えます。つまり地中熱利用やシステムの開発と高効率化・規格化ならびに評価技術の高精度化等に取り組むことで、技術の創出に留まらず、普及拡大に貢献することが求められているのです。研究開発の実施期間は本年度から平成30年度までの5年間。この事業においてはNEDOとの共同研究事業が基本であり、研究開発に掛かる費用については、提案者が3分の1、NEDOが3分の2を負担することになっています。しかし我々のプロジェクトに関しては、NEDOが全額負担する体制が取られています。これは我々にとって大きなアドバンテージとなるでしょう。同時に本プロジェクトに対して国から多大な期待が寄せているのだと考えると、大変名誉なことであり研究にも一層力が入ります。

 

―プロジェクトの内容について、詳しくご説明いただけますか。

もともとこのプロジェクトは、文部科学省が管掌している平成24年度地域イノベーション戦NEDOimage006略支援プログラム(東日本大震災復興支援型)のテーマの一つとして採択された「災害に強いエネルギー自立・自然共生システム基盤技術の研究開発」が基盤となっています。この研究では、浅部地中熱(地表から5~20m程度の比較的浅い部分にある地中熱)を冷暖房に活用した、災害に強い省エネルギー住環境システムの開発を目指しています。“復興”とついているように、福島県の自然に適合した自立型再生可能エネルギー利用システムの実現に寄与することが目的です。適切な掘削深度と掘削地点を決定するため、福島県内の地中熱リファレンスマップの作成も進めてきました。浅部地中熱利用は主に一般住宅を対象とし、鋼管杭基礎を活用した採熱システムにより熱交換井掘削が不要で、新築でも低価格で導入できるというメリットがあります。これまでの研究から事業化の可能性が見えてきた一方で、問題点や課題も明確になってきました。新築住宅への導入は可能ですが、より普及拡大させるためには既設住宅にも導入できるシステムを考えなくてはなりません。また信頼性を高めるためには、大規模な実機施設による実験や研究が必要不可欠です。今後、事業化を加速して導入範囲を広げるためには、資金調達も含めた大規模な研究開発へと転換することが大きな鍵となっていたのです。そこで我々は、国のエネルギー大規模事業を司るNEDOの支援を受けることを考えました。ちょうど新たに設けられたNEDOの「再生可能エネルギー熱利用技術開発」事業の公募要領に「浅部地中熱利用」という用語も含まれていたことから、本プロジェクトの研究内容と方向性が合致していたことも後押しになりました。採択を受けたことで、我々の進むべき道が間違っていなかったと確信しています。

 

―採択されたポイントについてお話いただけますか。

今回の採択には大きな意義があると考えています。一つは、我々がこれまで独自に進めてきた「浅部地中熱」の研究が、国に認められたという点です。我々は地表から深さ20mまでの地中の熱を「浅部地中熱」と呼んでいますが、その呼び方は本学部とその関係者が発案したもので、世の中では使われていない、つまり通用しない言葉でした。地中熱の利用といえば、100mもの穴を掘って深い地中から熱を採取するのが当たり前とされていましたから、5~20mの浅い地中の熱を利用するという考えは、いわば異端的に見られていたわけです。しかし、浅部地中熱という言葉を「国」が使用したことで社会的に認められたと言っても過言ではありません。もう一つ、この研究が実用化・製品化に最も近い研究であると理解されたことは、大変意義深いことだと考えられます。『ロハスの家』研究プロジェクトから始まった浅部地中熱利用の研究が成果として認められ、国の支援を受けることになったのですから、本学部のステイタスになるとともに大きな前進であると言えるでしょう。

 

―今後、どのように研究を進められますか。

 プロジェクトの目標は低価格化・高効率化・普及拡大の3つです。それらを実現するために、NEDOimage008以下の4つをテーマに掲げて研究を進めていきます。

①既設住宅向けの採熱システムの開発

②本学部独自のヒートポンプの開発

③浅部地中熱リファレンスマップの作成

④浅部地中熱利用省エネ効果のデータ化

 ①ついては、堀削技術を含め共同研究者である2社の企業が中心となって行います。②のヒートポンプについては、本学部が独自の技術を開発し、室内機・熱交換井とともに最も効率の良い運転システムの方法を研究し、実用化を目指します。さらに、住宅を設計する際に、あらかじめこの土地ではどのくらいの地中熱が利用できるかがわかるようにするのが、③のリファレンスマップです。事前の工事費用を削減できコストダウンにつながるとともに、事業者に対するシステム導入促進を図ります。また浅部地中熱利用の効果を学術的に示すことが、研究機関である大学の使命と考えています。④については、どれほどの省エネ効果があるのか具体的な数値としてデータ化することが目標です。それにより一般の方々にも一目でその良さが伝わり、普及拡大への足掛かりになるのではないでしょうか。

NEDOimage009研究スタッフとして、地域イノベーション事業に携わり実績を積んできた再生可能エネルギーシステム研究室の小熊正人特任教授(写真左下)を中心に、機械工学科の佐々木直栄教授、伊藤耕祐准教授が加わり、そして企業と連携しながら、研究開発に尽力してまいります。

 

 


―最後に、研究への意気込みをお聞かせください。

今までは暗中模索で進んできた感もありましたが、ようやくゴールがどこなのかが見えて、そのゴールに向かってどう進んでいけばよいかというシナリオも出来上がりました。今、スタートラインに立ち、いよいよ一歩踏み出そうとしているところです。あとはゴールに向かって突き進むだけです。しかし、今後研究を進めていく中で、さまざまな分野の研究者の力が必要となるでしょう。日本大学工学部発の『ロハスの工学』による事業化実現に向け、研究者一丸となって取り組んでいきたいと考えています。

 

―ありがとうございました。実用化につながる研究成果を期待しています。

 

NEDO「再生可能エネルギー熱利用技術開発」事業はこちら

 

再生可能エネルギーシステム研究室はこちら